研究課題/領域番号 |
26462617
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
太田 一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00326323)
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研究分担者 |
高橋 昭久 群馬大学, その他部局等, 准教授 (60275336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 浸潤・転移 / EMT / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究では頭頸部癌の治療効果の向上のため、癌細胞の浸潤・転移のしくみを解明し、そのしくみを基に浸潤・転移を阻止することを目的としている。近年、糖尿病が癌のリスクファクターであることが注目されており、癌細胞における糖代謝異常が癌の進展の大きな要因であることが明らかになりつつある。そこで、我々が開発した癌浸潤・転移モデル実験系などを用いて、糖尿病の病態として高血糖状態において癌細胞特異的な糖代謝異常がEMT(Epithelial-Mesenchymal Transition、上皮間葉移行)を誘導し、癌幹細胞の活性化を促進し、癌の浸潤・転移を亢進させるかどうかを解明する。 本年度は、頭頸部癌細胞における高血糖状態でのWnt、Snail、MT1-MMPの発現、それに伴うEMTの解析を行った。 一部の癌細胞において高血糖状態、あるいはそれに伴うOGTの活性化により、Wnt-Snailのシグナル経路の活性化が認められ、EMTが誘導された。また、高血糖状態で運動能を解析したところ、コントロールの状態よりも細胞運動能が亢進していた。 これらの結果より、in vitroにおいて高血糖状態はWnt-Snailシグナル経路を介してEMTを誘導し、癌細胞の運動能を亢進させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初より予定していた高血糖状態での癌細胞のEMTの解析は確認できたが、癌幹細胞への詳細な解析は十分ではなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、癌幹細胞マーカーの同定、スフェロイド軽装の確認などをすることで癌幹細胞の誘導が起こりうるかを確かめていく予定である。 さらに、本年度の結果を踏まえて、我々が開発・確立した鶏卵によるin vivo 癌浸潤・転移モデル(CAM assayなど)を用いて、糖尿病関連遺伝子、Wnt1 あるいはSnail を強発現させた癌細胞が、活性化癌幹細胞として生体において浸潤・転移能、さらには腫瘍増殖能を獲得するかどうかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初計画していた細胞培養の維持にかかる費用が軽減されたために次年度使用額が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はin vitroでの癌細胞の機能実験に加え、鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いての動物実験を施行するとともに、これまでの成果をまとめ、国内外の関連学会において発表し、関連学術誌に投稿するために研究費を拠出する予定である。
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