本研究は耳内嚥下音および頸部光ファイバーセンサ(以下F-SASセンサ)による非侵襲嚥下解析システムの開発とその有用性の検討を目的とした.方法としては耳内嚥下音単独あるいは従来からの頸部嚥下音との同時記録による嚥下音によるシステムおよび耳内嚥下音とF-SASセンサによる嚥下時の喉頭運動を同時記録するシステムの2つであり,これらについて嚥下機能の評価や動態解析における有用性を検討した. 耳内嚥下音については,本研究期間に対象例を増やすことにより咽頭期嚥下(嚥下反射)開始時に記録される特徴的なクリック音が嚥下時の耳管開大に関連することが確実になってきた.そのクリック音は有効な嚥下が行われたという指標になるだけでなく,咽頭期嚥下のシークエンスの一定点を正確に表すため,嚥下反射の時間的指標として極めて重要なものであることが分かってきた.臨床的な有用性を検討するために,このクリック音を嚥下の指標として用いて反復唾液嚥下の嚥下間隔を正確に測定し,従来の嚥下スクリーニング法では検知できなかった加齢による嚥下機能の低下を鋭敏に検出できることを示し,国内外の学会で発表するとともに,主要な学会誌に発表した.また,嚥下造影検査と耳内嚥下音を同時記録し解析することにより,嚥下動態の時間的解析の信頼性が極めて高くなることを学会発表した. F-SASセンサによる嚥下検知装置は,光ファイバーのマイクロベンディングロスを利用し,嚥下の際の喉頭の前上方への挙上運動を客観的に捉えるシステムである.これは研究分担者である三田地が開発し,研究責任者と共同で改良を加えてきた.実用化のための機器の小型化や頸部に装着する光ファイバ ーの配置と固定法を工夫することによって,嚥下の際の喉頭挙上運動を検知する感度が増加した.本システムは現在特許出願中である.
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