研究課題/領域番号 |
26462626
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
山下 拓 北里大学, 医学部, 教授 (00296683)
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研究分担者 |
冨藤 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院 耳鼻いんこう科, 講師 (80327626)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / 甲状腺癌 / 未分化癌 / 同所移植モデル / センダイウイルス |
研究実績の概要 |
本年度は、甲状腺未分化癌のin vivoモデルにおけるrSev/dMFct14(uPA2)-GFP(バイオナイフ)の抗腫瘍効果を中心に検討を行った。甲状腺未分化癌細胞株のうちKHM-5Mをヌードマウス脇腹に異所移植し、腫瘍形成を確認(8-11日目)後3群に分け、バイオナイフ、コントロールベクター(rSeV/dM)、PBS(コントロール)を3日ごと3回局注した。バイオナイフ治療を施行したマウスにおいて、コントロールベクターおよびPBSで治療したマウスと比較し、腫瘍移植後28日目の有意な腫瘍抑制効果が確認された。次に甲状腺未分化癌細胞株KHM-5Mを頸部切開にて露出したマウス甲状腺右葉に同所移植したところ全例に腫瘍定着が確認され、ヒト甲状腺未分化癌細胞株によるヌードマウス同所移植モデルの作成に成功した。この同所移植モデルマウスを3群に分け、腫瘍同所移植後1,4,7日目にバイオナイフ、コントロールベクター、PBSを局注した。経時的に体重を測定し、体重の20%以上の低下を見られた時点を死亡とみなし犠死させた。結果、バイオナイフ投与マウスでは、コントロールベクター及びPBSと比較し明らかな体重減少抑制効果と生存期間延長が認められた。またKHM-5M同所移植モデルに対し腫瘍移植後7日目にバイオナイフまたはrSeV/dMを1回腫瘍内局注し48時間後に犠死として摘出した腫瘍に対し TUNEL、抗GFP抗体, DAPI染色の3重染色 を行いイメージ解析ソフト(Image J)による解析を行った。結果、コントロールベクターは微かに甲状腺未分化癌にアポトーシスを誘導するが、バイオナイフ治療群においてTUNEL陽性のアポトーシス領域の有意な増大が確認された。バイオナイフの甲状腺未分化癌に対する抗腫瘍効果において、アポトーシスが重要な役割を占めていることがin vivoにおいても示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、癌治療の新しい手段として期待される、悪性腫瘍に選択的に強発現しているuPAをターゲットとした抗癌作用を有する組換え腫瘍溶解性センダイウイルス(バイオナイフ)の頭頸部癌に対する前臨床段階での有用性をin vitroおよびin vivoで検討し、そのメカニズムの検討や、効果的な投与方法、投与量を決定することにある。3年計画の2年目である本年度は甲状腺未分化癌に対するin vivoでの有用性やメカニズムの検討を行った。今回、甲状腺未分化癌に対する脇腹異所移植モデルでの腫瘍増殖抑制効果および同所移植モデルでの体重維持、生存期間延長効果が認められた。3日ごとの間隔で3回バイオナイフの局所投与が至適投与方法であると考えられた。またin vivoでの腫瘍組織の3重染色でin vivoにおいてもバイオナイフの抗腫瘍効果のメカニズムとしてアポトーシス誘導が重要な役割を担っていることが示された。これにより27年度の目標はおおむね達成したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、舌扁平上皮癌におけるバイオナイフのin vivoでの効果発現をヌードマウス同所移植モデルを用いて検討したい。バイオナイフの投与量、投与方法、投与間隔、回数などを検討し、抗腫瘍効果や体重維持や生存期間延長効果を舌扁平上皮癌においても確認したい。センダイウイルスは一般に宿主ゲノムに組み込まれることがなく、全身への副作用が極めて少ないことが知られているが、ヌードマウスモデルにおいても副作用の発現がないか、全身へのセンダイウイルスベクターの播種がないか、マウスの行動観察や血液データ、各種臓器のでのPCRによるセンダイウイルスの検討を通して、臨床応用を前提とした副作用の評価も検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に、甲状腺未分化癌のin vivoでの結果は報告した。舌扁平上皮癌のin vivoでの検討も施行したが、その一部は来年度へ検討を持ち越したため、その分の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
舌扁平上皮癌のin vivoでの検討を進め、また甲状腺未分化癌および舌扁平上皮癌双方での効果について論文投稿を予定しており、その費用に充てる予定である。
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