研究課題
本研究では、uPA活性依存的に抗腫瘍効果を発揮する腫瘍溶解性センダイウイルスBioKnifeのセンチネルリンパ節転移標的治療について検討し、舌扁平上皮癌頸部リンパ節マウスモデルにおいてその有効性を示した。uPA 活性依存的に細胞膜融合を誘導するBioKnifeが、舌癌頸部リンパ節転移マウスモデルにおいて頸部リンパ節へ移行し、微小転移巣に感染し、抗腫瘍効果を発揮するかどうか検討した。重要な実験結果としては、①原発巣に注入したrSeVはセンチネル理論に従って頸部リンパ節へ移行し、頸部リンパ節内でレポーター遺伝子であるGFP遺伝子を発現したこと、②BioKnifeが頚部リンパ節転移(LNM)に感染し、LNMを抑制したこと、③BioKnifeが感染したLNM内でアポトーシスが誘導されていたこと、が挙げられる。BioKnifeはセンチネル理論に従って頸部リンパ節に移行し、頸部リンパ節転移に感染することによって頸部リンパ節転移を抑制することが示された。臨床的N0症例であっても、最初に転移をきたすSNに対するリンパ節特異的な予防的治療を行うことができ、後発リンパ節転移の予防効果が期待できる。臨床的N0症例ではしばしば予防的頸部リンパ節郭清術を行う場合があり、7-8割の症例では結果的に不要な侵襲となる。本研究結果からは、標準治療との併用によりリンパ節制御が期待でき、低侵襲化に寄与することが期待できる。BioKnifeによる腫瘍溶解性ウイルス療法は、治療の低侵襲化による患者のQOL向上のみならず、頭頸部癌の予後向上を目指した新たな治療戦略を展開できるものと考えている。本研究は、臨床応用が容易な手法を用いており、ウイルスベクターの安全性も高いことから、BioKnifeの臨床応用による新たな頭頸部癌低侵襲治療の礎となることが期待される。
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癌と化学療法
巻: 44 ページ: 569-574
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
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