研究実績の概要 |
高度視野狭窄をきたす緑内障患者と網膜色素変性(以下RP)患者を対象として、全身疾患の有無などの背景因子、運転頻度、運転状況と、過去5年間の自動車事故の有無について聴取した。臨床データとしては、視力、眼圧、ゴールドマン視野検査(視標:Ⅲ-4-eを使用)、ハンフリー視野検査(HFASITA Standard中心24-2およびエスターマン視野検査)を施行し、HfaFiles ver.5(Beeline社)を利用して、両眼視野integrated visual fieldを作成した。さらに、ドライビングシミュレータ(HONDAセイフティーナビ、以下DS)を使用し、運転能力を評価した。これは、一般乗用車のフロントガラスからの眺めをプロジェクターで投射したもので、速度一定で、ハンドル操作はなく、側方からの車の飛び出しなど全16場面での事故数を記録できる。また、モバイル型眼球運動計測装置(アイマークレコーダEMR-9)と同期させることにより、ドライビングシミュレータ上で事故を起こした場面・事故を回避した場面の視線計測データや眼球運動データを記録した。 その結果、RP・緑内障患者とも、視力は総事故件数と相関がなく、エスターマンスコアは有意な相関があった(RP: r=0.74, P=0.004, 緑内障: r=0.47, P=0.02)。一方、視野良好眼のMDは、RP患者でのみ総事故件数と有意な相関があった(RP: r=-0.64, P=0.02, 緑内障: r=-0.16, P=0.45)。眼球運動計測装置では、周辺視野のないRP患者で、脈絡のない目の動きが多く見られた。エスターマンスコアは自動車事故と関連すると思われ、自動車運転能力の評価では、疾患に関わらず、両眼視野を考慮する必要があると考えられた。
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