研究実績の概要 |
FocalSealにヒアルロン酸粉末を一定量混合し,粘弾性を高めたものを用いて,白色家兎に硝子体手術を行った.網膜剥離手術手技は以下の通り.①角膜輪部より1mm後方で3portを作成,②硝子体カッターにて硝子体切除を行う.③視神経乳頭より下方2乳頭径の位置でバクフラッシュニードルを用いて網膜裂孔を作成.④網膜裂孔より網膜下に人工房水を注入し,実験的網膜剥離を作成.⑤液体-空気置換により網膜を復位させる.⑥3portを縫合する. 12匹の家兎を6匹ずつ2群にわけ,1群の右眼にFocalSealを塗布し,60秒の光照射を行って網膜裂孔を閉鎖して空気-液体置換をして手術を終了した.もう1群の右眼は液体-空気置換により網膜復位させた後に手術を終了した. 注入前と注入後1,7,14,28日、2,3,6ヶ月において手持ち細隙灯顕微鏡での前眼部観察と単眼倒像鏡による眼底観察を行った.また,網膜光干渉計により,網膜裂孔とその周囲の網膜形態を評価した.その結果,FocalSealを塗布していない群では全例網膜全剥離となった.FocalSealを塗布した群では前眼部に若干の炎症を認め,また網膜裂孔の拡大を認めたが,網膜剥離の再発は起こらなかった.裂孔の拡大はシーラント物質がポリエチレングリコールであることから,水を吸って膨潤するためと考えられた. 新たなFocalSealによりガスタンポナーデなしで網膜剥離を抑えることができたことが今年度の研究の一番意義深いところであるが,膨潤により裂孔が拡大したことについては今後の課題と考える.
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