研究課題
現在国内では様々な網膜疾患を治療する目的で,年間約10万件の硝子体切除術がなされている。術中術後合併症を防ぐために術中にガスやオイルなどの眼内タンポナーデ物質を充填することが一般的である。既存のタンポナーデ物質には網膜毒性や患者の術後体位制限など種々の問題がある。我々は,低ポリマー濃度でありながら,反応後数分でゲル化可能なゲル化臨界クラスターシステムによる臨界ハイドロゲルを開発した。この新規臨界ハイドロゲルは従来のゲル形成限界濃度を下回る極低ポリマー濃度であり,弾性率は数Paとヒトの生理的硝子体と同等で,膨潤圧は1kPa(7.5mmHg)未満であるため理論的に眼圧上昇に寄与しない。Preliminary studyとして,マウスに本ハイドロゲルの皮下注射を行い,細胞毒性や炎症反応がほぼないことを確認した。また,ウサギの硝子体切除後に本ハイドロゲルを眼内タンポナーデ物質として充填し,術後の眼圧,透明性,炎症反応,網膜機能,網膜微細構造を評価したが,1年間の観察期間において問題のないことを確認した。さらにウサギ網膜剥離モデルを作成し,本ハイドロゲルをタンポナーデしたところ,網膜剥離を治癒せしめたことも確認した。この新規臨界ハイドロゲルに対し,東京大学で物質特許を出願し,眼科領域における人工硝子体として東京大学と筑波大学で共同特許を出願中である。本ゲルの分子設計から臨床応用前段階までの実験成果が認められ,Nature Biomedical Engineering誌にアクセプトされ(Hayashi K, Okamoto F et al. Fast-forming hydrogels with ultralow polymeric component as an artificial vitreous body. Nature Biomedical Engineering. 2017 Mar;1.doi:10.1038),Nature誌にTopicsとしてLetterが掲載された. (Nature. 2017. 543, 319-320 doi:10.1038/nature21898)
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Nature Biomedical Engineering.
巻: 1 ページ: s41551-017-0044
10.1038
Transl Vis Sci Technol.
巻: 5 ページ: 7
www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201703101400.html
www.tsukuba.ac.jp/wp-content/.../170310okamoto.pdf