研究課題/領域番号 |
26462645
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 彰英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80516188)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 眼瞼下垂 / 挙筋短縮術 / meniscometry / 涙液貯留量 |
研究実績の概要 |
眼瞼下垂手術は眼瞼疾患に対する手術の中でも最も頻度の高い手術である。手術の内容は、眼瞼挙筋を短縮し眼瞼の挙上を得るものである。眼瞼下垂症に対する挙筋短縮術施行後の涙液貯留量の変化については、過去に我々が術後1.5ヶ月での涙液量を測定した結果、平均涙液量は減少し、特に術前の涙液量が多いほど減少しやすく、術前の涙液量が少ない症例では変化量は少ないことを報告した論文のみである(Cornea 33: 14-17, 2014)。 当該年度の研究成果として、眼瞼下垂手術後長期の涙液貯留量の変化についてIOVSに報告した。具体的内容は、挙筋機能の良好な眼瞼下垂症に対して挙筋短縮術を施行した27例43眼および上眼瞼皮膚弛緩症に対して眼瞼形成術(余剰皮膚切除術)を施行した18例29眼を対象に、術後1.5ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の時点での開瞼高 (MRD-1)およびvideo meniscometryを用いて涙液メニスカス曲率半径Rを測定し、涙液量の長期経過について検討した。挙筋短縮術後Rは有意に減少し6ヶ月まで持続していたが、眼瞼形成術後Rは変化しなかった。挙筋短縮術では術前のRが大きいほどRの減少率は有意に高く、術後MRD-1値と増加量はいずれもRの減少率と相関しなかった。眼瞼下垂手術後の涙液量減少は長期に維持され、涙液減量率は術後の開瞼高や開瞼増加量よりも術前の涙液量に依存していることが示唆された。また、術後に開瞼高が増加しない眼瞼形成術では涙液量に変化はないことが示された。 以上のことから、眼瞼下垂手術では涙液量が多いほど術後に減少しやすく、眼瞼下垂を伴う機能性流涙の症例では、眼瞼下垂手術が治療のオプションとなりうることが示唆され、意義ある結果を得ることができた。また、眼瞼下垂手術における涙液減少を客観的に証明することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼瞼下垂手術後の涙液貯留量の長期間にわたる客観的変化を示し、機能性流涙に対する治療法のオプションを得ることができた。また、これらの結果を眼科の国際的な一流誌(IOVS)に掲載することができた。(Long-term tear volume changes after blepharoptosis surgery and blepharoplasty.Invest Ophthalmol Vis Sci 56: 54-58, 2015.) 現在まで、眼瞼下垂手術前後の涙液貯留量のみならず、自発性瞬目の変化も同時に測定しており、データを蓄積し解析進行中である。また、機能性流涙に対する新しい術式の客観的評価も行っており、研究目的の達成度としてはおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画通りに推進する予定であるが、自発性瞬目のばらつきをどのようにデータ化するかを検討している。具体的には、同じ症例の自発性瞬目でも1回ごとに速度や深さが異なり、全く同じ瞬目が繰り返されているわけではないことがわかってきた。複数回の瞬目を平均値でデータ処理することは信頼あるデータ解析とは言えず、1回ごとの瞬目について詳細に検討して、中央値、外れ値を考慮するなど瞬目の特徴が正しく反映されるデータ処理方法を検討しているところである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ解析用のパソコン、および解析ソフト、データ保存のためのHDD等を購入予定としていたが、瞬目解析のデータ処理方法が決定するまで見合わせた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度へ繰り越した分については、瞬目解析のデータ処理方法が決定次第、解析用のパソコン等の物品費に使用予定である。翌年度分は予定通り使用予定である。
|