本研究の目的は、糖尿病網膜症の病態における不飽和アルデヒドアクロレインの関与について検討することであった。本検討では、アクロレイン結合タンパクであるFDP-Lysがヒト増殖糖尿病網膜症(PDR)患者の線維血管組織において血管内皮細胞とグリア細胞に存在すること、PDR患者硝子体中で増加すること、高濃度のアクロレイン刺激は培養血管内皮細胞に対して毒性を発揮するが、低濃度刺激ではむしろその生存や増殖に対して正の働きをすること、などを示した。本検討結果は、糖尿病網膜症におけるアクロレインの病態関与を明らかとし、今後さらなるその病態解明や予防的介入の開発につながっていくと期待される。
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