研究課題/領域番号 |
26462661
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 誠 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80273788)
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研究分担者 |
山田 裕子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00359861)
金森 章泰 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (10444572)
三木 明子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10726988)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アクアポリン / 乳酸 / 網膜神経節細胞 / 緑内障 |
研究実績の概要 |
培養網膜神経節細胞(RGC)を用いて、培養液中のグルコースを乳酸に置換し、細胞膜のアクアポリン9(AQP9)をRNA干渉で抑制した。RGCの生存をLive/Dead assayで、細胞内の活性酸素産生をCM-H2DCFDA蛍光量で、顕彰した。コントロールはscramble 正常siRNAを導入したものを用いた。AQP9発現を抑制しなければ、網膜神経節細胞はグルコースないしL型乳酸環境下では同様の生存率を示したのに対し、無グルコースないし生理的不活性型であるD型乳酸培養環境下では、RGCの生存率は有意に低下した。また活性酸素産生はグルコースないしL型乳酸環境下ではほとんど見られなかったのに対し、無グルコースないしD型乳酸環境下では有意に増加した。さらに、AQP9発現を抑制すると、L型乳酸環境下でも細胞死ならびに活性酸素産生量は有意に増加した。網膜神経節細胞においてAQP9がエネルギー基質としての乳酸輸送を司っている可能性と、その発現低下が緑内障や他の視神経疾患等網膜神経節細胞の様々な病態に関与する可能性を示した。 また、抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性の視神経脊髄炎関連視神経炎と抗AQP4抗体陰性の特発性視神経炎における光干渉断層計所見と静的視野検査による視機能障害との相関を比較解析した。AQP4抗体陽性の視神経脊髄炎患者では乳頭周囲網膜神経線維層厚ならびに網膜神経節複合体厚は視機能障害の程度とよく相関していた。これに対し、陰性例では視機能は回復しているのに対して、光干渉断層計指標は菲薄化するものから正常範囲までまちまちであり、相関性がなかった。AQP4抗体は神経網膜に重篤な影響を与える可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回培養実験系を用いて、初めてL型乳酸が網膜神経節細胞のエネルギー基質として働き、またAQP9がその輸送を司ることを証明できたことは、AQP9が様々な視神経疾患の病態に深く関与しているという我々の仮説の傍証となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、AQP9の遺伝子改変動物を用いて、生体眼におけるAQP9の生理的意義ならびに各種病態における関与を検討する必要がある。すでに我々は、AQP9ノックアウトマウスをデンマークのAalborg大学健康科学工学科Søren Nielsen教授から譲渡された。今後このマウスを用いて、加齢変化ならびに実験的緑内障における網膜神経節細胞の生存ならびに機能変化を解析する予定である。 また、視神経脊髄炎における抗AQP4抗体の神経網膜に与える影響についてはさらに症例数を増やし論文化を進める。
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