研究課題/領域番号 |
26462663
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木村 和博 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60335255)
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研究分担者 |
園田 康平 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294943)
林 謙一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90238105)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | retina / fibrosis / nuclear receptor / transcription factor / RPE cell |
研究実績の概要 |
増殖性硝子体網膜症や加齢黄斑変性などの難治性網膜硝子体疾患の治療成績は改善してきたにもかかわらず、重症や再発例では治癒にいたらない。この原因の1つに二次的に形成された網膜下の線維性瘢痕組織がある。さらに網膜下に形成される線維性瘢痕組織に対しては今のところ有効な治療法は存在しない。本研究の目的は、網膜下線維性瘢痕の形成、収縮の病態解明を行い、網膜色素上皮細胞を基点とした核内受容体およびそれと相互作用する転写因子群の網膜下線維性瘢痕の形成、収縮における役割を明らかにすることである。生体内における線維性瘢痕形成では、網膜色素上皮細胞(RPE)の線維芽細胞、筋線維芽細胞への形質転換つまり上皮-間葉系移行(EMT)および細胞収縮が重要である。そこで、in vivoでの瘢痕組織形成、収縮を模倣しRPEをコラーゲンゲル内で3次元培養するアッセイ系確立した。そこで、このアッセイ系にて、ゲル収縮を抑制する転写因子および核内受容体をスリーニングにかけた。候補分子としていくつかの分子が同定された。得られた候補分子の中で核内受容体に結合するエストロゲン・プロゲステロンにまずは着目し、解析を行った。その結果、これらの分子はRPEを起点としたコラーゲンゲル収縮を優位に抑制した。その分子機構の一つは、蛋白質分解酵素のMMPの分泌亢進、活性化抑制であることが明らかになった。この結果から、閉経後に女性で膠原病などの自己免疫疾患の発症率が増加することにエストロゲン・プロゲステロンに量、活性が関与していることから、眼における線維性瘢痕組織形成、収縮にも女性ホルモンが重要な働きをしていると考えられる。今後はさらにこの女性ホルモンに対する核内受容体の制御機構やその活性化化合物の作出などを試みていく必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である網膜下線維性瘢痕の形成、収縮の病態解明おいて、その中心的な役割を果たす網膜色素上皮細胞(RPE)を用いた三次元培養系を確立し、このアッセイ系にて収縮抑制分子のスクリーニングを行った。その結果、いくつかの候補分子が得られた。その中の上清ホルモンであるエストロゲン・プロゲステロンに着目し、実際にこれらがMMPの発現、活性化を制御しRPEを起点としたゲル収縮を抑制することを明らかにした。またこれらの特異的な核内受容体が実際の増殖性硝子体網膜症の増殖組織において優位に発現していることも明らかになった。これまでの結果から、網膜下瘢痕組織形成、収縮において、女性ホルモンが重要な働きをしていることが示唆され、当該年度において達成目標はおおむね果たされたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
確立した網膜色素上皮細胞(RPE)を用いた三次元培養系を用いて、スクリーニングの結果得られた収縮抑制分子のさらなる解析を行う。女性ホルモン以外の候補分子によるまずはin vitroでのRPEを起点としたコラーゲンゲル収縮抑制の分子機序を明らかにする。さらに、これら分子によるコラーゲンゲル収縮抑制の分子機序を比較し、共通あるいは異なる点を見出す。さらに、RPEの上皮―間葉系移行(EMT)の分子マーカーであるalpha-SM actinのプロモーターをドッキングさせたレポーター遺伝子を用いて、ゲル収縮に加えて、活性化/抑制に関与しているプロモーター領域や核内受容体結合領域などを同定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度における実験計画に大きな変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により982,993円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究は、細胞の培養系から動物実験にいたる一連の実験が必須であることから、効率的に研究を遂行するため種々の試薬および実験動物購入を含め申請のとおりの研究費を必要する。 生化学的、分子生化学的、細胞生物学的解析のため、遺伝子関連試薬、細胞培養関連試薬、免疫科学実験試薬の購入を平成27年度は計画している。詳しくは、レポーターシステム、immunoblot法、ELISA法、DNAマイクロアレイ、PCRアレイ、二次元電気泳動法、タンパクビーズアレイシステム、免疫組織染色などに対する実験試薬の購入に研究費が必要である。さらに、網膜色素上皮細胞の初期培養を必要とするため、実験動物であるマウスの購入に研究費が必要である。本研究に関する情報収集、成果発表に係る経費についても平成27年度に計上する。
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