研究課題/領域番号 |
26462665
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
平岡 美紀 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80246983)
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研究分担者 |
大黒 浩 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30203748)
吉田 香織 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40596160) [辞退]
阿部 晃 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70136927)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 眼内炎症 / 自己免疫性 / リソゾーム / ホスホリパーゼA2 / 酸化リン脂質 / ルイスラット / ぶどう膜炎 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実施計画では、動物モデルを用いて自己免疫性眼内炎症における房水中のリソゾームホスホリパーゼA2(LPLA2)のリ ン脂質代謝への関与を調べることであった。 そこで、ルイスラットに網膜抗原とフロイトアジュバンドの懸濁液にて免疫し、実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を起こし、その際の眼内タンパク量・LPLA2活性の経時的な変化と炎 症との相関を検討した。その結果、ルイスラットのEAUモデルでは、ぶどう膜炎惹起前に比べ、惹起2週後には房水中のタンパク量が最大になり、惹起4週後ではほぼ惹起前の量に戻る。このことは、既報の ように惹起2週後をピークとした眼内炎症が起こったことが確認できた。また、惹起前・惹起後1、2、3、4週後の房水および血清 を採取し、LPLA2活性を比較した結果、房水中のLPLA2活性は眼内炎症と呼応して増減がみられたが、血清のLPLA2活性は眼内炎症の影響を受けなかった。このことは、眼内炎症に伴って房水中のLPLA2活性が上昇したことが明らかになった。また、同じモデ ルを用いて眼球の免疫組織学的検討を行ったところ、EAU惹起前にはLPLA2タンパクの発現はみられなかったが、惹起2週後の炎症 極期の眼球では前房内及び硝子体内に浸潤した細胞、特にマクロファージにLPLA2タンパクの発現がみられた。さらに酸化リン脂質に対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、眼内炎症に伴って前房内及び硝子体内に浸潤したマクロファージに酸化リン脂質の発現がみられた。この結果から、眼内炎症において眼内に浸潤したマクロファージによって房水中のLPLA2活性が増強し 、眼内炎症によって増えた房水中の細胞断片などが貪食細胞で消化・分解される際に細胞断片の成分 であるリン脂質の分解にLPLA2が作用していることが示された。さらに眼内炎症に伴って増えた酸化ストレスによって生じた酸化リン脂質の動向もLPLA2の発現と呼応していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己免疫性ぶどう膜炎のラットモデルを用いた検討は予定通り進行しており、さらに眼内炎症における酸化リン脂質の動向についても明らかにすることができた。これまで、眼内炎症における酸化ストレスの増減の報告はいくつかある。しかし国内外を問わず、眼内炎症における酸化リン脂質について検討した報告はない。また急性炎症における酸化リン脂質の関与については、肺炎モデルのものが少数あるだけで、他の臓器での炎症に伴う酸化リン脂質の検討はされていない。今回得られたデータは眼内炎症での酸化ストレスの増強に伴う酸化リン脂質の発現を示した初めてのものである。
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今後の研究の推進方策 |
28年度以降の計画としては、まず眼内炎症に伴って活発化する房水浄化機構におけるLPLA2の役割を明らかにする目的で、エンドトキ シン誘発ぶどう膜炎(EIU)モデルを用いて、LPLA2 活性を阻害した時の、炎症の推移と眼内のリン脂質消化への影 響を生化学的、組織学的に検討する。 そのためにLPLA2欠損マウスをもちいてエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)を起こした時のぶどう膜炎惹起前、惹起後炎症初期(12 時間後)、惹起後炎症極期(24 時 間後)、消炎後期(48 時間後)について、各群それぞれの眼球を摘出し、検体の組織学的 検討を行う。とくに炎症の程度と脂質の貯留について、リン脂質、酸化リン脂質に対する抗体を用いた染色を行う。また貪食細胞のマーカーとLPLA2 の抗体を用いて二重染色を行 い、その分布を比較する。一方、生化学的検討として、それぞれの眼組織の部位別にリン脂質の量を定量する。これにより、炎症およ び消炎期でのリン脂質代謝におけるLPLA2 の役割を解明することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国ミシガン大学からLPLA2欠損マウスを移入する予定であったが、相手方機関の手続きの関係で、H27年度中の移入ができなかった。LPLA2欠損マウスは日本国内移入後にSPF化をする必要があり、その後、当大学に移入される予定である。米国からの移送費用とSPF化の費用分が余剰分となった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、米国ミシガン大学からLPLA2欠損マウスを移入するための手続きを行っており、H27年度の余剰分は米国からの移送費用とSPF化の費用として使用予定である。
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