研究実績の概要 |
間葉系幹細胞には再生誘導作用、抗炎症作用、血管新生抑制作用など様々な効果や作用があることが知られている。一方、羊膜にも抗炎症作用や創傷治癒促進効果があると同時に間葉系幹細胞の存在が報告されている。そこで、羊膜に存在する間葉系幹細胞が羊膜の持つ効果にどのように関与しているか明らかにするため、羊膜から分離培養した間葉系細胞を解析し、上皮創傷治癒モデルへの影響を比較検討した。羊膜から間葉系細胞を分離・培養し、その解析を行うため、フローサイトメーターによる間葉系幹細胞のマーカー、造血細胞マーカー、神経堤由来因子などの発現を検討した。また、創傷治癒への影響を観察するため、培養角膜輪部上皮シートを用意し、その中央部に6mmトレパンにて上皮を欠損させることによってin vitroにおける創傷治癒モデルを作成した。羊膜もしくは羊膜由来間葉系細胞と共培養した培養上清を用いて創傷治癒モデルへの影響を観察した。 羊膜から分離・培養した間葉系細胞では間葉系幹細胞で発現するDC29, CD44, CD73, CD90の発現を確認することができた。また、造血細胞や血管内皮のマーカーであるCD14, CD34, CD45, CD31は陰性で、神経堤由来因子であるCD49dとCD56が発現していた。創傷治癒モデルにおいて、羊膜由来間葉系細胞と共培養した培養上清により、創傷治癒が促進される傾向を示した。羊膜に存在する間葉系細胞は比較的未分化な細胞で存在し、羊膜の持つ創傷治癒促進効果に関与している可能性が考えられた。
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