研究課題
本研究は常染色体優性視神経萎縮症(Autosomal dominant optic atrophy、ADOA)の遺伝型、臨床型についての研究である。ADOAは比較的頻度の高い遺伝性視神経疾患で、患者は徐々に進行する視力低下および中心視野の異常を自覚する。約80%の症例で、OPA1遺伝子が発症に関与していると言われる。近年、OPA1遺伝子を持つ患者に、 Auditory neuropathy(AN) による聴覚障害の合併が見られることが知られるようになった。さらに最近の研究によって、本疾患には聴覚障害以外にも眼瞼下垂、外眼筋麻痺、Neuropathy、ミオパチーなどの全身症状が発症することが分かってきた。最近の英国の報告によると、優性視神経萎縮症患者において視神経萎縮以外の症状は約20%に発症するとされ、合併症の出現頻度が比較的高いことが分かっている。しかし国内において眼外合併症をともなう優性視神経萎縮症の報告は極めてまれであり、その病態および頻度については不明な点が多い。初年度は、東京医療センターおよび慈恵医大の眼科において、20家系23症例についての検討を行った。このうち、OPA1遺伝子に変異が確認されたものは16家系17症例であり、残りの症例は解析途中である。視神経外症状についは3家系3症例について確認できた。内訳は、ANが2例に見られ、歩行障害は2例に、また外眼筋麻痺が1例に見られた。ANの2症例については、R445Hの変異が見られた。視神経外症状の発症頻度は欧米の報告に比べて高くないものの、今後さらに症例を増やしてその頻度と遺伝子型との関連について検討する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
初年度については、東京医療センターおよび慈恵医大の症例について検討を行った。症例数は20例を超えたが、OPA1遺伝子の解析に時間を要するためにすべての患者の解析は終了していない。また、解析結果にはこれまで報告のない新規変異を持つ症例も見られるため、遺伝子型確定のためには通常のシーケンスのみでは断定するには限界がある。
今回のサンプルからは、視神経外症状の頻度が比較的低いという結果が得られた。本研究の結果の信頼性を高めるために本年度は他施設にも参加を呼びかけ、さらに多くの症例について検討する予定である。また、OPA1遺伝子に新規変異が発見される可能性は今後も多くあるため、変異の病的意義を確認するための機能解析を行う新たな研究チーム造りも検討したい。
本年はすでに遺伝子変異が確定した症例についても表現型の検討を行うことができたため、遺伝子解析に要する費用が当初よりもかからなかった。また、人件費については当初予定の人数が集まらなかったため。
症例の増加に伴う遺伝子解析費用、ならびに神経機能解析装置(VEP)のバージョンアップのための費用等に使用する予定である。
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