黄斑に障害を有するロービジョン患者の視覚機能に及ぼす光の影響を明らかにすることを目的とした。黄斑障害が生じて中心が見えなくなると、モノを見るための中心となる固視領域が周辺に移動する。我々は、検査時の明るさが固視領域に及ぼす影響を検討した。さらに、近年普及してきたLED照明が従来の白熱灯と比較して視力や見え方の自覚に差があるか検討した。 異なる明るさで読書能力を評価した結果、明るくなると読書視力が向上し2000lux以上で安定した。この変化は、病態ではなく中心暗点の有無が影響していた。通常の眼底視野計の暗い条件と2000luxでの固視を比較したところ、中心固視が出来ない患者では明るさによって位置が変わること、この位置は必ずしも網膜感度が最も良い領域とは限らないこと、中心暗点・中心固視の有無が関係していることが明らかとなった。通常の十字の固視標を用いた固視評価法の問題点を踏まえ、患者に選ばせた固視領域、固視標が最もよく見える固視領域、そして文字視標を用いた固視領域を比較したところ、中心固視がない場合、検査に用いる視標の形態により固視領域が変化する症例があることを明らかとした。最終年度に行った研究から、最も文字が読みやすい領域は、視細胞周囲の形態が保たれている領域に位置する傾向があった。同じ照度の場合には光源による視力の差は認めないものの、従来の白熱灯に比べLEDの光源を好む傾向があったことから、波長の差は視力以外の見え方に影響していることが示唆された。 本研究は、従来の方法では日常生活における実際の視機能を評価出来ていない可能性を明らかにした点で臨床的に重要な知見をもたらした。この評価には、日常生活に相当する明るさで検査が必要であること、文字を読む領域を評価するためには文字を視標として用いるべきであることがはじめて明らかとなり、ロービジョンケアを行う上で臨床的意義は大きい。
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