研究課題/領域番号 |
26462683
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
近藤 峰生 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80303642)
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研究分担者 |
杉本 昌彦 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00422874)
生杉 謙吾 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10335135)
松原 央 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20378409)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先天停在性夜盲 / 完全型 / 犬 / 動物モデル / 網膜電図 / 双極細胞 / 視細胞 |
研究実績の概要 |
今回我々は、世界で初めてイヌにおいてcCSNBの表現系を有する常染色体劣性の1家系を日本で発見した。これはビーグル犬の1家系であり、毒性実検のために飼育されていたイヌをスクリーニングする過程で偶然見つかったものである。我々の夜盲イヌの家系は常染色体劣性の遺伝形式を示し、眼底に異常がなく、ERGはa波が正常でb波が消失していたことにより、ヒトにおける常染色体劣性cCSNBのモデル動物である可能性が高いと考えられた。イヌのcCSNBモデルはこれまでに報告がなく、世界で最初のモデルになると考えられる。我々は、正常イヌとcCSNBのイヌから杆体系および網膜電図(ERG)を記録した。刺激の強度は10段階程度変化させ、intensity-response functionをプロットした。錐体ERGについては、長時間刺激を用いてON反応とOFF反応も記録した。その結果、網膜内のON型双極細胞のみ機能が欠損していることがわかった。また正常イヌと夜盲イヌの硝子体内にシナプス遮断薬を注射し、シナプス伝達障害の程度を評価した。硝子体内にAPB (L-2 amino-4- phosphonobutyric acid)を投与し、長時間刺激で錐体ERGのON反応とOFF反応を記録した。その結果、夜盲イヌの硝子体内にAPBを注射して薬理学的にシナプスを完全にブロックしてもERGに変化はみられなかった。夜盲イヌのERGは正常イヌの硝子体内にAPBを注入したERGと全く同一波形になった。また夜盲イヌのOFF経路に異常がないかどうかを調べる目的で、硝子体内にPDA(cis-2,3- piperidinedicarboxylic acid)を注入した。その結果、夜盲イヌのERGはPDA後に変化を示し、夜盲イヌのOFF経路は機能していることが示された。このような結果により、我々の夜盲イヌは選択的なON経路機能障害を有していることが証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、網膜電図を用いた機能解析により、我々の発見した夜盲イヌが選択的な網膜のON経路機能障害を有していることを証明することであったが、その目的は十分に達せられたと考えられる。研究は計画以上に順調に進行しており、網膜の組織切片の解析に加え、電子顕微鏡による視細胞と双極細胞の連結部位の解析をほぼ終えている。それによれば、少なくとも通常の光学顕微鏡および電子顕微鏡の解析では我々の夜盲犬の網膜に異常はみられなかった。おそらく、平成27年度に行う予定である、免疫組織学的検討がさらに詳細な夜盲メカニズムを解明する鍵を握ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
夜盲イヌの網膜組織を詳細に観察する。通常の光学顕微鏡に加え、電子顕微鏡にてシナプス部位を詳細に調べる。また、視細胞とON型双極細胞のシナプスの構造・形成・機能に重要な蛋白に対する抗体を用いて網膜の免疫組織を行う。用いる抗体として、mGluR6, TRPM1, Goα, synaptophyrin, PKCαなどを使用する。夜盲イヌの遺伝子変異を同定する。まずはcCSNBの原因遺伝子として知られている5つの遺伝子のイヌの相同部位をスクリーニングする。それらに変異がみられなかった場合には、我々のイヌ家系のDNAを用いて次世シーケンスによって全ゲノム解析を行い、原因遺伝子を同定する試みを行う。(4) 原因遺伝子が同定された後に、AAVを用いて正常な遺伝子を網膜内に注射する遺伝子治療を行う。この治療によって網膜機能が回復したかどうかをERGによる電気生理学的検査と迷路による行動学的検査によって評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
網膜電図の実験において、使用するコンタクトレンズ電極の必要数が当初の計画より少なく済んだためである。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越しとなった金額は、27年度に行う考えられる免疫組織実験に使用する予定である。
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