研究課題
我々は、角膜上皮幹細胞・前駆細胞においてN-cadherinが発現し、幹細胞ニッチに関与している可能性を示唆している。また、生体防御機構であるNrf2/Keap1システムが角膜上皮再生に重要な役割を果たしていることを示した。昨年度までに、①N-cadherinを維持培養可能ないくつかの培養条件を見出すことに成功、②さらに低温環境下において、Nrf2活性化剤が、培養組織中の幹細胞の保持に関与している可能性を示した。③これまでに行ってきた角膜上皮幹・前駆細胞の維持培養系の開発における研究成果を一部利用して、ヒトiPS細胞から機能的な角膜上皮幹・前駆細胞を培養し、組織化することに成功しており(R. Hayashi et.al. Nature 2016)、本年度においては得られた角膜上皮細胞の性質について調べた。①-③の研究成果は以下の通りである。①特定のシグナル伝達阻害剤において、N-cadherin発現が維持およびup-regulateされることを見出した。興味深いことに、N-cadherin発現が維持される場合においては、同時に角膜上皮分化マーカー発現も増大することが示された。②Nrf2活性化剤による低温環境下における幹細胞保護機構について検討を行った。その結果、Nrf2活性化剤(特にEbselen)は、Nrf2活性化を介さない直接的な経路と、Nrf2活性化を介した抗酸化ストレス応答の両方の経路で、幹細胞ならび組織構造の保護に寄与している可能性が示唆された。本実験結果について、学術雑誌への掲載ならびに学会発表を行った(R. Katori, R Hayashi et al. Sci. Rep. 2016、香取良祐、林竜平ら、角膜カンファレンス、2017)。③ヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞は少なくとも発生初期には強くN-cadherinを発現し、未分化性が高いことが示唆された。
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Nat Protoc.
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http://www.comit.med.osaka-u.ac.jp/jp/news/newsData/news_20170327_1.html