研究課題/領域番号 |
26462686
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松下 賢治 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40437405)
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研究分担者 |
臼井 審一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20546882)
相馬 剛至 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70582401)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 眼医工学 / クロスリンキング |
研究実績の概要 |
緑内障の原因として唯一エビデンスのある因子は眼圧であるが、現在眼圧以外にも循環障害、篩状板の脆弱性、遺伝性、免疫性などの多数の危険因子により進行する慢性多因子疾患と理解されている。特に視神経乳頭を支える篩状板と乳頭周辺組織の脆弱性が近年注目されている。篩状板は100万本の視神経が通過する場所で、近視など元々脆弱な個体では視神経に大きな負荷がかかり視神経症が発症リスクを増大すると考えられているが治療法は開発されていない。今回我々は近視の治療としても注目されているクロスリンキング治療を乳頭周囲強膜へ応用し、安全性有効性を確認することとした。人間のような近視眼のモデルマウスは存在しないため、まずは緑内障の原因である高眼圧モデルマウスを作製しその有効性を確認する。本研究は緑内障性視神経症の脆弱性改善を目指す治療法の開発であり、眼医工学の応用で、新たな神経保護治療と治療効果判定法の開発によって緑内障治療の重要な基盤情報となる可能性がある。初年度は広く使われているブラックマウスの高眼圧モデル作成を行った。白色マウスよりも眼圧上昇効率が落ち、安定していない。一方、網膜の発生時期による強膜発生観察と適切な網膜形態観察のマーカーを決定するため免疫染色を行い抗体を選別した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である本年はレーザー誘発高眼圧モデルマウスの作製を行った。我々はすでにalbinoであるCD-1マウスを用いたモデルマウスの作製に成功している。今回はその方法を用いて眼圧が上昇しにくいblackマウスに対するより効率的なレーザー誘発高眼圧モデルマウスの作製の検討をした。通常の方法では成功率は低いが、レーザー光を吸収しやすいICGを尾静脈から注入することにより成功率を上げることできた。それによりalbinoマウスで見られた比較的急峻な眼圧上昇と眼圧下降パターンではなく、眼圧最大値が1週間程度持続する個体が多かった。しかし出血や炎症も伴って異常な高眼圧になるものやレーザー施行後数日してから眼圧が上昇する個体も存在した。これは続発的な眼圧上昇の影響があるため今後原発緑内障の病態に近い眼圧上昇のモデル作製の検討の必要があると思われる。また、二光子顕微鏡による篩状板の観察についてはEGFP-GFAPマウスの導入ができておらず進展はしていない。また強膜クロスリンキング法に関して適当な機器の選定中で、その間網膜や視神経毒性の観察用に行う免疫染色に用いる抗体の選別を行い、眼圧上昇モデルでの染色を試みたが、治療後の観察ができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
より原発緑内障に近い緑内障モデルを作製するため眼圧上昇モデルを再検討すると同時にEGFP-GFAPマウスの導入を行うことで観察効率を上昇させる。また、強膜クロスリンキングに対しては角膜のクロスリンキングを応用し実験を行う。まず、強膜局所に点眼投与できるような還流孔付き、吸引付きパイペット型固定プローブを作成する。マウス眼球を脱臼回旋し強膜を露出する。その後、固定プローブでマウス眼球強膜の赤道部5x 5mm 四方の領域を固定し、限局性に光感受素材リボフラビン0.1% 点眼を30分プローブ内に還流する。この方法により生体のままリボフラビン0.1% を強膜局所表面に塗布することができる。その後、角膜クロスリンキングで標準的に用いられるDRESDEN PROTOCOLを参考に5cm離したプローブ型UVA ダブルダイオードで表面照度3 mW/cm2を基準に距離条件照度条件を変え、370 nm で照射する。7日後、1ヵ月後3ヵ月後に眼球摘出し、色素染色透過性から、組織抵抗性の変化を確認する。また、コンピュータ制御のバイオテスターで強膜の引っ張り試験を行い、Young率(Pa)など生体力学的特性を測定し、生体強度変化の組織リモデリングの影響を分子生物学的に解析するため、摘出組織を酵素分解しマイクロアレイで左右の治療眼、非治療眼で組織特異変化を検出する。また、周辺組織の観察により本治療の強膜と周辺組織に対する安全域を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回はalbinoであるCD-1マウスを用いたモデルマウスの作製法を用いて眼圧が上昇しにくいblackマウスに対するより効率的なレーザー誘発高眼圧モデルマウスの作製法の開発を行ったが、レーザーの吸収効率が不安定で、眼圧上昇の効率が低いためモデルの作製に時間がかかっている。そのため、二光子顕微鏡による篩状板の観察について行うEGFP-GFAPマウスの導入ができておらず、また強膜クロスリンキング法に関して現時点でまだ適当な機器を選定中で導入ができておらず物品費が残余した。また、実験を優先して学会参加が少なく、旅費も残余した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は、EGFP-GFAPマウスの導入により二光子顕微鏡による篩状板の観察を行う。また、強膜クロスリンキングに対しては適切な機械の導入を行う。角膜のクロスリンキングを応用し、連携研究者前田、研究分担者相馬と共に実験を行う。治療後に眼球摘出し、色素染色透過性から、組織抵抗性の変化を確認する。また、コンピュータ制御のバイオテスターで強膜の引っ張り試験を行い、Young率(Pa)など生体力学的特性を測定し、生体強度変化の組織リモデリングの影響を分子生物学的に解析するため、摘出組織を酵素分解しマイクロアレイで左右の治療眼、非治療眼で組織特異変化を検出する。また、周辺組織の観察により本治療の強膜と周辺組織に対する安全域を検討する。
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