研究課題/領域番号 |
26462688
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木内 良明 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (40214738)
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研究分担者 |
竹中 丈二 広島大学, 大学病院, 病院助教 (70526194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 角膜バイオメカニクス / 緑内障危険因子 |
研究実績の概要 |
角膜の生体力学特性が測定可能な眼圧計であるCorvis STの各種パラメータと眼球の構成要素、年齢、性別、眼圧、角膜厚、眼軸長の関係を検討した。またCorvis STの各種パラメータの再現性も合わせて調べた。対象は94人94眼の健常者である。その結果、水平方向のパラメータであるA1 length, A2 length, Peak distance, および、最大変位を示すHighest concavity timeは眼圧の影響を受けることがないこと。しかしそれらのパラメータは再現性が低いことが分かった。それ以外のパラメータは眼圧の影響を受けること。ゴールドマン眼圧計による眼圧値の予測には眼球の構成成分である角膜厚や眼軸長は関係なく、コルビスのパラメータが深く関与することを明らかにできた。その成果は第33回European Society of Cataract & Refractive Surgeonsで発表し、PLoS ONE 10 (10): e0140385.誌に報告した。今後の研究の基礎データになる。 白内障手術がCorvis STの各種パラメータに及ぼす研究を行った。前眼部の弾性的な性格は角膜を支えるばねと動きに抵抗するダンパーの組み合わせとして表現される。白内障手術を行うとこのばねもダンパーもその力が減弱することが分かった。白内障手術を行うと眼圧が下がることが知られているが、その眼圧下降の一部は角膜の生体力学特性の変化に伴う見せかけの眼圧下降である可能性を示唆した。論文投稿中であり、その成果の概要は2016年の日本眼科学会総会、シアトルで開かれたARVO年次総会で発表した。 緑内障の進行速度を示すMD slopeとCorvis STの各種パラメータの関連に関する調査の症例集積が終了し、統計解析が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順当に経過している。最終目標である角膜の剛性の指標と緑内障の進行速度を調べる研究が、最終局面に差し掛かりつつあるためにこのように評価した。しかし、データの解釈が難しい。すっきりとした結果を得るためにさらに踏み込んだ考察、あるいは追加の研究が必要かもしれない。緑内障手術前後のパラメータ変化、これは同じ個体で眼圧が変化したときのパラメータの変化を見るものである。眼圧に関係するパラメータ、関係しないパラメータはこれまで統計学的に推測していたが、この結果が得られると、その正当性を実際のデータを用いて明らかにすることができる。プロジェクトの一つが終了するとそのデータを基に次のプロジェクトの解釈が容易になる良いサイクルが回っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中のプロジェクトを確実に論文化していく。 現在のところ眼球の剛性に関する、biomechanicsの検討を行ってきた。Biomechanicsの研究も、緑内障病型別、あるいは薬物の剛性パラメータに対する影響の研究は手付かずの状態である。近視は眼軸長が長くなる。しかし、眼球の形態は単純に眼球が膨らむものではない。不均一な変形を遂げている。眼球の局所性の変化と眼球のbiomechanicsの関連性を求めて行く。さらには剛性や圧力、伸展などのメカノストレスがいかに細胞応答を変化させるか明らかにするメカノバイオロジーの研究にシフトしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
12,813円の余剰が生じたが、これは経費の節減に努めた結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では問題なく使い切れる金額と考えている。
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