研究課題/領域番号 |
26462692
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
福田 憲 高知大学, 医歯学系, 准教授 (70335751)
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研究分担者 |
松崎 茂展 高知大学, 医歯学系, 准教授 (00190439)
内山 淳平 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20574619)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バクテリオファージ / 眼感染症 / 角膜炎 / 眼内炎 / 抗菌薬 / 細菌 / メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 |
研究実績の概要 |
今年度は前年度に引き続き、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を用いた角膜炎の家兎モデルの条件検討およびバクテリオファージによる治療効果の検討を行った。 家兎角膜炎モデルにおいて、角膜実質内への投与を確実にするために、投与量を前年度の半分の50 μlにし、菌数は2倍にした。家兎(New Zealand white rabbit)の角膜上皮を剥離した後、MRSA(103 CFU/50 μl)を角膜実質内に注射した。20時間後に対照、バクテリオファージの溶菌酵素であるリゾスタフィン(20 μg/ml)、抗菌点眼薬(セフメノキシム)の点眼(1日4回)による治療を開始した。治療開始3日後(10回点眼後)、安楽死させ角膜を摘出し、角膜内の生菌数および好中球浸潤の評価のためミエロペルオキシダーゼ活性を検討した。リゾスタフィン点眼群は生菌数が減少している個体もあったが、感染が成立していない個体などがあり個体差が大きく3群間で統計学的有意差は得られなかった。 より安定した角膜炎モデルを作製するため、角膜実質に投与するMRSAの菌数を変えて検討した。MRSAを101 CFU、102 CFU、103 CFU、104 CFU、105 CFU、106 CFU投与して角膜の臨床所見を観察したところ、104 CFU投与した群が最も感染が成立することが明らかとなった。 最も感染が成立しやすかったMRSAの菌数(104 CFU/50 μl)を角膜実質内に注射し、20時間後に対照、リゾスタフィン(20 μg/ml)、抗菌点眼薬(セフメノキシム)の点眼(1日4回)を開始した。点眼開始3日後(10回点眼後)、安楽死させ角膜を摘出し、角膜内の生菌数およびミエロペルオキシダーゼ活性を検討した。リゾスタフィン点眼群は対照群、セフメノキシム点眼群に比して、角膜内生菌数およびミエロペルオキシダーゼ活性が減少する傾向にあったが、対照群で自然治癒する個体などがあり個体差が大きく3群間で統計学的有意差は無かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家兎を用いてMRSA角膜炎モデルの作製およびバクテリオファージ溶菌酵素の効果を検討した。これまでに検討したマウスに比して家兎はMRSAの角膜への感染が成立しやすかった。また種々の検討によりMRSA家兎角膜炎モデルの至適の菌数を明らかにしたが、やはり感染後に自然治癒する個体も見られ、治療効果を判定する本実験では有意な結果を得ることができなかった。家兎におけるMRSA角膜炎モデルでは、感染成立後の臨床症状の個体差が大きいために、治療効果を検討する実験系においては直接実験結果に影響を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
MRSAを用いた角膜炎モデルでは、免疫能が正常な動物においては感染が成立しにくく、臨床症状の個体差が大きく自然治癒する個体があることなどから、点眼による治療効果を見る実験系としては適さないと考えられた。次年度はより病原性が強いと考えられる腸球菌および緑膿菌を用いて角膜炎あるいは眼内炎モデルを作成し、バクテリオファージおよび溶菌酵素の効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
家兎のMRSAによる角膜炎モデルおよびバクテリオファージ投与実験の構築にあたって、菌株、菌数、ファージ種、培養条件などについて当初予定より詳細な条件検討が必要であったため、その後の実験に使用予定であった試薬等の一部の購入が次年度に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
MRSAより病原性が強いと考えられる腸球菌および緑膿菌を用いて角膜炎あるいは眼内炎モデルを作成し、バクテリオファージおよび溶菌酵素の効果を検討する予定である。
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