緑内障に代表される網膜疾患において、その網膜神経節細胞死の機序については十分に解明されていない。申請者らは網膜神経節細胞死に小胞体ストレス負荷を介した機序が関与しているという仮説に基づき研究を進め、その網膜障害時に小胞体ストレスが誘導されることを初めて明らかにした。さらに、小胞体ストレス細胞死を抑制する遺伝子の解析から、強力な細胞保護作用を有する神経分泌タンパク質であるVGF nerve growth factor inducible (VGF)を見出した。本研究ではこれらの研究を更に発展させ、①緑内障におけるVGFの関与並びにその細胞保護機構を解明、②VGFの新規治療ターゲットとしての可能性を明らかにすることを目的とする。 本研究課題において、マウス実験緑内障モデルにおけるVGF の発現変化およびVGFペプチドの作用について検討し、予定通り下記の成果を得た。マウス緑内障(視神経挫滅)モデルにおけるVGFの発現の検討:視神経挫滅1~7日における網膜内のVGF遺伝子発現変化を検討したところ、3日をピークにVGF遺伝子の発現上昇が認められた。VGF蛋白質は遺伝子発現の上昇よりも遅れて5日後に上昇が認められた。さらに、マウス緑内障(視神経挫滅)モデルにおけるVGF活性ペプチドの作用に関する検討:VGF活性ペプチドであるVGF588-617(AQEE30)の緑内障モデルに対する作用について検討した。AQEE30を硝子体内に直接投与したところ、視神経挫滅後の網膜神経節細胞死を有意に抑制した。本知見は、VGFが網膜神経節細胞障害に対して保護作用を有することを示唆する。
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