研究課題
眼表面上皮である角膜および結膜上皮、また再建術に応用が期待される口腔粘膜および鼻腔粘膜上皮から増殖活性の高い細胞を抽出し羊膜上培養上皮シートを作成した。角膜上皮はp63含有上皮群から分化誘導することで重層化が可能であり、分化型ケラチン以外にもMUC1/MUC16の膜結合型ムチンの発現誘導が可能であり、粘膜バリアーの再構築および眼表面への移植再建が可能となった。口腔粘膜上皮は眼組織特異性の高いPAX6、K12の発現は誘導されずMUC1+/MUC16-の粘膜特性を発現している。血管新生は炎症刺激により角膜上に誘導されるが、抗VEGF添加により抑制効果が得られた。しかし抗VEGFにより細胞増殖が抑制されることが観察され、臨床応用へのアプローチ法や濃度設定への検討が必要である。またp75の発現維持により増殖活性が維持されているが、より病的な移植後環境での生着を目指した増殖能の向上と刺激因子の検討が必要である。in vitroでは角膜類似構造としての重層化が可能となり、さらに眼表面へ移植後の解析では口腔粘膜上皮特性が維持されていることを示したが、さらに炎症およびドライアイなどの環境下での組織変化や角化誘導に対する検討が必要である。鼻腔粘膜上皮はKGFによる上皮増殖・分化誘導とpronaseによる上皮酵素処理が重要であることをすでに見出しており、鼻腔粘膜のみならず杯細胞含有の非角化型粘膜上皮への培養系の適正化が検討できた。また杯細胞からは結膜杯細胞と同様のMUC5ACムチンが発現していることを同定したことにより、眼表面への移植後の粘膜バリアー再建に有用性が高いことが期待できる。さらに上皮の防御因子や免疫関連レセプターなどの発現パターンを検索することが重要である。
4: 遅れている
研究時間が有効に使用できていないため、再生医療面でのレトロスペクティブな解析などに停滞している。杯細胞への分化誘導などを用いた実験や他粘膜組織への応用研究が有効に進行していない。
粘膜上皮の培養系を有効に使用して粘膜特性とその臨床的効果を検索していく。培養口腔粘膜上皮ではp75含有率と増殖能の関連性を検討し、血管新生の抑制方法の確立として抗VEGFなど複数因子の効果を検討する。再生医療での血管新生と上皮構築を解析し、再生上皮の角膜特性と粘膜バリアーを評価する。鼻腔粘膜上皮のムチン特性を解析し、培養過程および上皮シートでの発現量の制御や移植後の効果について検討する。杯細胞への分化効率やその制御システムについて研究を予定する。種々の培養系の違いによる眼表面上皮および粘膜上皮への影響を検索し、より理想的な再生医療での応用を探究することで将来の再生医療への還元が期待できる。
すべて 2016 2015
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