研究課題
難治性眼表面疾患に対する新しい培養粘膜上皮移植の開発と異所性生着した粘膜上皮による眼表面バリアーの再建を目標とした研究を遂行した。本研究により角結膜上皮の代用として口腔粘膜および鼻腔粘膜を用いた移植可能な培養上皮シート作成方法を確立し、増殖活性の獲得と杯細胞への分化誘導が確認できた。口腔粘膜上皮シートでは、角結膜上皮シートで発現されるPAX6遺伝子は誘導されないものの、形態的には4-5層の非角化性重層扁平上皮を再生することが可能となった。これらの細胞は培養状態でもまた眼表面に異所性生着した後にも眼表面上皮化生は生じないものの臨床応用として代用角膜上皮として高い有用性が示された。また新規に従来のマウス3T3細胞とウシ血清を用いない培養系の開発を行い、より安全に再生医療に応用できるより高質な上皮シート作成に成功した。この培養口腔粘膜上皮シートではより多くのp75陽性細胞およびholocloneなprogenitor細胞の存在を維持することができ高い増殖活性が観察され、再生医療に用いた場合の長期細胞生着や高い創傷治癒効果が期待できる。上皮分化誘導によりタイトジャンクションや細胞接着分子であるZO1やDesmoplakineの発現が誘導され粘膜上皮バリアーが再構築できた。ケラチン発現の解析では、本来の口腔粘膜上皮発現であるK13,K3に加え、角膜に特異的性の高いK12の発現がsporadicな状態ではあるものの発現誘導され家兎への移植モデルにおいても継続発現が観察された。また鼻腔粘膜からの培養上皮作成ではKGF添加により杯細胞への分化誘導が可能となった。この杯細胞からは結膜上皮杯細胞と同様にMUC5ACムチンの発現と分泌が確認でき、代用結膜としての有効性が期待できた。難治性眼表面疾患に対する口腔粘膜上皮や鼻腔粘膜上皮を用いた代用再建治療につながる有意義な研究結果が得られている。
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