研究課題/領域番号 |
26462696
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
慶野 博 杏林大学, 医学部, 准教授 (90328211)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 眼免疫 |
研究実績の概要 |
本研究課題では硝子体のT細胞に対する免疫抑制作用、特に制御性T細胞(CD4+Foxp3+T regulatory cells: Tregs)の誘導効果について検討を行った。平成26年度においてin vitroにて抗CD3抗体、抗CD28抗体でCD4+T細胞を刺激する際に硝子体単独、TGF-beta1単独、硝子体+TGF- beta1の存在下で培養し、制御性T細胞の誘導効果を検討したところ、硝子体単独ではTregの誘導がみられなかったがTGF-beta1添加群でTregの誘導効果がみられ、さらに硝子体を加えたところTregの誘導効果がさらに促進された。この結果から硝子体がTGF- beta1を介してTregの誘導に関与していることが明らかとなった。平成27年度は1) TGF-beta2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導能の検討、2) 硝子体による制御性T細胞特異分子の発現誘導効果の有無 の2点について検討した。その結果、TGF-beta2を用いた場合でもTGF-beta1と同様に硝子体によるTregの誘導効果の促進効果がみられた。さらに制御性T細胞に高発現していることが知られているCD25、CD103、CD152分子に着目し、TGF-beta1/2のみ、TGF- beta1/2+硝子体の存在下でCD4+T細胞を刺激培養時にこれらの分子の発現に変動がみられるかフローサイトメーターを用いて検討したところ、TGF-beta1もしくはTGF-beta2のみの培養でCD25、CD103、CD152分子の発現上昇がみられ、さらに硝子体を加えた群では、上記分子の発現が促進された。以上の結果より、硝子体はTGF-beta1/2を介してCD4+Foxp3+ Tregを促進し、Treg関連分子の発現も増強させることが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の実験では豚眼から採取した硝子体を用い、マウスの脾臓からCD4+T細胞を分離、in vitroにて抗CD3抗体、抗CD28抗でCD4+T細胞を刺激培養を行い、1) TGF-beta2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導能の検討、2) TGF-beta1/2存在下での硝子体による制御性T細胞特異分子の発現誘導効果の有無の検討、3)硝子体中のトロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在と制御性T 細胞誘導能促進作用との関連について検討を予定した。 1)についてはTGF-beta2を用いた場合でもTGF-beta1と同様に硝子体によるTregの誘導効果の促進効果がみられた。2)については制御性T細胞に高発現していることが知られているCD25、CD103、CD152分子に着目し、TGF-beta1/2のみ、もしくはTGF-beta1/2+硝子体の存在下でCD4+T細胞を刺激培養時にこれらの分子の発現に変動がみられるかフローサイトメーターを用いて検討したところTGF-beta1、もしくはTGF-beta2のみの培養でCD25、CD103、CD152分子の発現上昇がみられ、さらに硝子体を加えた群では、上記分子群の発現が促進された。 以上の結果は硝子体がTGF-beta1以外にTGF-beta2を介してCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導能を強力に促進することを示している。以前より眼内液(前房水、硝子体液)においてTGF-beta2の発現量が多いことが知られており、眼内においても硝子体がTGF-beta2を介して活性化T細胞から制御性T細胞への変換に関与している可能性が考えられる。3)については1)、2)の実験の施行に時間を要したため次年度に施行予定である。以上の結果より予定していた実験計画はほぼ計画通りに施行され、平成27年度の研究課題は中程度達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から硝子体がTGF-beta1/2を介してCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導能を強力に促進することを明らかとなった。平成28年度はTGF-beta1/2を介した硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導機序を明らかにするため以下の実験を立案する。 1) 硝子体中のトロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在と制御性T 細胞誘導能促進作用との関連: 以前よりTSP-1はTGF-beta1/2を介して制御性T細胞の誘導に関与していることが報告されている (Masli et al. Curr Eye Res 2014)。そこで豚眼から採取した硝子体中のTSP-1の存在についてELISA法を用いて検討を行う。 2) 抗TSP-1抗体存在下でのTGF-beta1/2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導促進能の影響についての検討: 硝子体中にTSP-1が存在していた場合、そのTSP-1がTGF-beta1/2のinactive formからactive formへの変換を促進している可能性が考えられる。そこで抗TSP-1抗体をT細胞刺激培養時に添加することでTGF-beta1/2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導促進作用に変動がみられるか確認する。 3) TGF-beta1/2+TSP-1による制御性T 細胞誘導能促進効果の検討: 上記1)の実験からTSP-1が硝子体中に存在することが証明された場合、硝子体を用いずTGF-beta1/2+TSP-1によってCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導効果が促進されるのかフローサイトメーターを用いて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は26年度と同様に硝子体とT細胞との関連に着目し、硝子体によるT細胞に対する免疫抑制作用、特に制御性T細胞の誘導効果について検討を行った。特に1) TGF-beta2+硝子体存在下でのCD4+Foxp3+制御性T 細胞の誘導能の検討、2) TGF-beta2存在下での硝子体による制御性T細胞特異分子の発現誘導効果の有無の検討、3)硝子体中のトロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在と制御性T 細胞誘導能促進作用との関連について検討を予定した。今年度は上記1)、2)の実験の施行、追試に時間を要したため、3)の実験を完遂することができなかった。3)の実験は平成28年度に繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は27年度と同様、硝子体によるT細胞に対する免疫抑制作用、特に制御性T細胞の誘導効果について検討を行うため以下の3項目の実験計画を予定している。 1) 硝子体中のトロンボスポンジン-1(TSP-1)の存在と制御性T 細胞誘導能促進作用との関連について検討する。豚眼から採取した硝子体中のTSP-1の存在についてELISA法を用いて発現の定量を行う。2) 抗TSP-1抗体存在下でのTGF-beta1/2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導促進能の影響について検討するため抗TSP-1抗体を購入し、T細胞刺激培養時に添加することでTGF-beta1/2+硝子体によるCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導促進作用に変動がみられるか確認する。3) 上記1)の実験からTSP-1が硝子体中に存在することが証明された場合、硝子体を用いずTGF-beta1/2+TSP-1のみでCD4+Foxp3+制御性T細胞の誘導効果が促進することが可能か検討を行う。
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