研究課題
本研究では、これまでに我々が独自に樹立・報告した虹彩に存在する虹彩由来組織幹/前駆細胞、虹彩由来不死化細胞および虹彩由来iPS細胞を用いた網膜神経細胞への分化機構を明らかにするトランスレーショナルリサーチとしての網羅的網膜再生の基礎研究である。1)平成26年度に引き続き、平成27年度は新規樹立したヒト虹彩組織由来iPS細胞株(虹彩iPS細胞)のiPS細胞として多分化能をテラトーマ形成実験や細胞凝集体による三胚葉への分化を証明した。さらに昨年度からの課題であった接着培養による神経幹/前駆細胞への前分化誘導に成功し、神経幹/前駆細胞のマーカーであるNestinやMusashiを強発現する細胞の作出に成功した。さらに神経細胞への分化誘導にも一部で成功しており、網膜神経細胞マーカーやを発現する細胞が作出できつつある。また、一部の細胞にて神経細胞に発現するNaチャネルの測定を行ったところ、弱いながらもNaチャネルを発現している細胞が存在することが明らかとなった。2)安定発現不死化細胞株を作出するため、平成26年度に構築したEF1αによるVectorを用いて新たに虹彩由来不死化細胞の作出に成功した。虹彩組織由来iPS細胞とは異なり、無血清浮遊培養を行うことで神経幹/前駆細胞のマーカーであるNestinやMusashiを強発現する細胞の作出に成功した。今後、さらに網膜神経細胞への分化誘導を行っていく。3)虹彩由来組織幹/前駆細胞の維持培養法を検討し、SSEA-4やCD29を強く発現維持できる培養条件の確立に成功した。今後、より効率的に神経幹/前駆細胞や網膜神経細胞に分化できるかどうかを比較検討していく。
2: おおむね順調に進展している
虹彩由来iPS細胞株、虹彩由来不死化細胞株が順調に樹立され、それぞれの細胞株において神経幹/前駆細胞のマーカーであるNestinやMusashiを強発現する細胞の作出に成功した。さらに神経細胞への分化誘導にも一部で成功しており、網膜神経細胞マーカーやを発現する細胞が作出できつつある。また、培養条件の改良によって虹彩由来組織幹/前駆細胞において、有用な組織幹/前駆細胞のマーカーであるSSEA-4やCD29を強く発現し、維持することができるようになった。これは、これまで困難であったin vitroにおいて組織幹/前駆細胞を維持培養できるようになったことでもあり、将来、自己の組織幹/前駆細胞を用いた再生医療への応用も期待できる。
平成28年度では、以下の課題を中心に実験に取り組む。1)虹彩由来iPS細胞株から網膜神経細胞への分化誘導、さらに神経細胞の生理的機能についてパッチクランプ法を用いた解析を継続していく。2)虹彩由来不死化細胞株についても虹彩由来iPS細胞株と同様に網膜神経細胞への分化誘導と生理的機能評価を行う。3)虹彩由来組織幹/前駆細胞においては、これまでの培養条件との比較検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal
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