研究課題/領域番号 |
26462703
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
三木 淳司 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90447607)
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研究分担者 |
山下 力 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (00515877)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光干渉断層計 / 同名半盲 / 脳梗塞 / 網膜神経節細胞 / 対光反射 / 外側膝状体 / 視神経萎縮 / 後大脳動脈 |
研究実績の概要 |
これまで、外側膝状体よりも後方視路病変において、先天性やきわめて長期にわたる病変以外では視神経萎縮(網膜神経節細胞(RGC)萎縮)をきたさないと考えられてきた。しかし、近年の光干渉断層計(OCT)の高速化・高分解能化に伴う精度の向上により、RGCに関連した内層厚の評価が可能となり、外側膝状体後方病変による後天性同名半盲症例の中で、半盲性視野欠損に対応する黄斑部網膜内層の菲薄化や視神経乳頭周囲の網膜神経線維層(RNFL)の半盲に合致する菲薄化が比較的発症早期に認められる症例が存在することが明らかになった。また、これらの変化は経時的に進行することが示唆されている。ただし、これまでの報告における網膜の経時的変化は、すべて横断的研究に基づく推定であり、より正確な経時的変化を評価する縦断的研究はこうした研究の歴史が浅いことにもより、いまだに報告がない。また、この変化を確固たる証拠もなくRGCの経シナプス変性によるものとする報告が多いが、その考えが正しいかどうかは十分に検討されていない。我々はRGCの前部視路の直接の障害による障害と経シナプス変性は混在しており、前者はより早期に出現し、完成されるのに対し、後者では緩徐に進行するのではないかと推測している。この仮説を証明すべく、この一連の研究では縦断的なOCT所見の経時変化とセクター別解析結果を検討する。我々は、より広範囲、高深達の画像が取得可能であるswept-source OCTを用い、広範囲の網膜における菲薄化の有無の検討を行っている。また、外側膝状体に近い病変では網膜内層厚の菲薄化が強い印象があり、このことを検証するために脳MRIの異常部位領域の解析も行っている。一方、定量的な局所の対光反射計測においても後頭葉病変による同名半盲で対光反射の減弱が認められ、この対光反射異常と網膜厚の変化との関連や脳障害部位との関連も調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
spectral-domain (SD-) OCTのGCC厚のsignificance map およびdeviation mapの異常領域面積解析は、ほぼ計画通りに定量方法を確立しつつある。すでに国内の主要学会で発表し、論文を準備中である。SD-OCTのデータ解析はセクター別や視野との対応など、より詳細な検討へと進んでいる。また、長期観察を行った症例はいまだに少ないが、縦断的データ解析も徐々に進めている。視索障害の症例と外側膝状体よりも後方の病変の症例との比較検討がきわめて重要であるが、視索障害の症例数がやや少なく、有効な比較のためにはもう少し症例の蓄積が必要である。しかし、SS-OCT用の解析プログラムの詳細についての検討に時間を要したために、プログラムの納入が初年度内に行えなかったので、次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、SD-OCTおよびswept-source (SS-) OCTを用いて正常対照者と同名半盲患者のデータ収集を行い、半盲側および健側の網膜各層厚を比較検討する。中心視野の網膜変化が強いことを考慮し、同名半盲患者の広範囲の網膜各層厚における部位別の菲薄化の有無を比較検討するため,SS-OCTを用いる。これまでの解析において、健側にもわずかであるが、対照群と比較して菲薄化がみられることがわかっているが、このメカニズムも考察する。また、横断的評価に加えて縦断的評価を行い、経時的に菲薄化が進行していく変化が網膜各層厚のどの部位で起こるのかを明らかにする。縦断的評価を行えている症例数はいまだに少ないため、今後、症例数を増やす必要がある。市販のOCTソフトウェアは必ずしも同名半盲の障害パターンを評価する際に適切な解析を行えないので、正常対照者と半盲患者の網膜各層厚の比較検討を行い、半盲患者における網膜障害の診断能が高いグリッドパターンの確立を目指す。 さらに、この研究の最も重要なテーマはRGC障害のメカニズムの解明である。我々は2つのメカニズムが症例によって異なる比率で関与していると考えている。我々の仮説に基づいて、複数の角度から証拠を提示することにより、メカニズムを浮かび上がらせることができればよいと思われる。現在、行っているのは急性期・慢性期の同名半盲症例のMRI画像の解析である。すなわち、それぞれの患者の脳病変を標準脳上で同定し、OCTで菲薄化の強い患者群と菲薄化の軽い患者群の画像を差し引くことによって網膜内層の菲薄化と関連する脳部位を同定するのが目的であり、現在、個々の脳での異常部位同定を終えたところであり、今後、グループデータとして脳画像解析を予定している。OCT所見でのグループ分けだけでなく、対光反射異常の有無によるグループ分けも行い、これらの結果も比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
SS-OCT解析用ソフトウェアの開発が遅れて、購入が次年度にずれ込んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
SS-OCT解析用ソフトウェアの購入の予定である。
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