G蛋白共役型受容体であるGPR120はω-3不飽和脂肪酸を含む中・長鎖脂肪酸を主なリガンドとして様々な生体機能を担っている。GPR120はマウス腸管、肺、脂肪組織に多く発現し、とくに腸管組織においては腸管上皮に存在する内分泌細胞(L細胞)に局在を認め、GLP(Glucagon-like peptide)などの消化管ホルモンの分泌に関与することが報告されている。そのうちGLP-2は腸管吸収能の促進、アダプテーション(順応)、炎症抑制作用などへの関与がわかっており、GLP-2の投与により動物モデルの腸炎、肝障害が軽減されることも報告されている。さらに、GPR120は腸管組織に局在するマクロファージのサブセットを炎症性のM1マクロファージからM2マクロファージへ誘導し、マクロファージを介した炎症抑制作用に関与していることが示唆されている。 今回我々は、野生型マウス腸管組織を用い凍結組織標本を作製し、免疫組織化学染色法によりGPR120蛋白質の発現局在について解析を行った。その結果、遠位小腸及び近位結腸にGPR120が局在していることがわかった。さらに、マクロファージ特異的な細胞表面マーカーであるF4/80について、GPR120との重染色を行ったところ、F4/80陽性細胞とGPR120との共局在が認められた。 以上より、GPR120は遠位腸管、特に回盲部周辺においてマクロファージを介した生理作用及び炎症抑制作用に関与することが強く示唆された。現在、定常状態及び炎症状態での各評価をマウス腸炎モデルにて行っている。また、マウス腸管よりマクロファージサブセットを単離しex vivoでω-3不飽和脂肪酸を用い刺激を行い、マクロファージの活性化、サイトカイン産生等について解析する実験を予定された研究期間後も引き続き実施することを検討している。
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