研究課題/領域番号 |
26462705
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 英生 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60210712)
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研究分担者 |
齋藤 武 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20406044)
光永 哲也 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80375774)
上條 岳彦 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 所長 (90262708)
照井 慶太 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (70375773)
中田 光政 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90375775)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 神経芽腫 / side population / 免疫不全マウス |
研究実績の概要 |
平成26年度は神経芽腫細胞株からCD133 陽性細胞を分離することを目指した。1. side population (SP)の分離 MYCN増幅神経芽腫細胞株であるIMR32, CHP134, LA-N-5と、MYCN非増幅細胞株であるSH-SY5Yを取り上げ、各細胞株を継代培養した。proliferation medium を用い5%CO2、37℃にて培養し、週1回新鮮なproliferation mediumを足して、継代時には新鮮培地とconditioned medium を半量ずつ混ぜて新たな培地とした(Hansford LM et al. Cancer Res 67:11234-11243,2007)。本培養法にて、IMR32株、LA-N-5株、さらにSH-SY5Y株も継代が維持されたため、2012年度までの先行実験で試みたHoechst33342排泄能を用いたFACS により細胞をソーティングした。細胞密度を1×106/ml となるよう調整し、Heochst33342で37℃90 分染色しFACS にてSP分画を同定した。2. CD133陽性細胞の分離 分離されたIMR32株、LA-N-5株、さらにSH-SY5Y株のSP分画を、細胞表面マーカーであるCD133抗体で標識し、マグネティックスビーズ付き抗体で処理後、autoMACSで分離を試みている。分離されたCD133陽性細胞の総数は、IMR32株、LA-N-5株、SH-SY5Y株の順に、4.3×103 (mean)/ml , 2.8×103/ml , 6.8×102/ml程度であり、回収率が予想外に低値である。現在、回収細胞数の増加を目指し、導入細胞数や細胞培養条件を微調整している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の培養実験により、まず着目細胞株としてIMR32、LA-N-5、SH-SY5Yをセレクションすることができた。各細胞株により、分離CD133陽性細胞が最大となる至適条件(継代回数と間隔、SP分画採取に持ち込む細胞数、FACSのgating幅など)は微妙に異なっており、現在条件設定に傾注しているところである。CD133陽性細胞の分離・採取は今までに10回行ったが、予想された如くIMR32細胞での回収率が高い印象がある。平成27年度もSP分画、CD133陽性細胞のsortingを続行し、3株のうち安定した回収率を期待できる株を用い、同細胞のcharacterizationを開始する。 また平成26年度に経験した神経芽腫患児3例の腫瘍組織を用い、CD133発現をPCR法と免疫組織染色で検討中である。上記細胞株実験の進捗をみながら、患者検体においてもSP分画、CD133陽性細胞の分離を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
現在着目している細胞株IMR32、LA-N-5、SH-SY5YからのCD133陽性細胞の回収が安定した時点で、本陽性細胞の生物学的特性を以下の観点から検討する。1.MYCN発現の比較CD133陽性細胞株におけるMYCN増幅の有無をmRNA, 蛋白レベルで検討する。前者はreal-time PCR法、後者はwestern blotting法を用いる。本来であれば由来細胞株のMYCN増幅を反映しているはずだが、増幅レベルの多寡を評価する。2. sphere形成能の比較 無血清培養系を用いCD133 陽性細胞と親株細胞を培養しsphere形成能を比較する。両群におけるsphereの成長速度を検証する。3. 増殖能の評価 増殖曲線を作成し、親株とCD133陽性細胞における増殖能を比較する。また親株間の増殖能の相違が、各細胞株由来のCD133陽性細胞間にも反映されているのか、確認する。各細胞株における癌幹細胞の機能の差異を検討する。4. 造腫瘍能の比較 CD133 陽性細胞と親株細胞を免疫不全マウス(NOD/SCID)皮下に接種し腫瘍増殖を観察する。5. 転移形成能の検討 免疫不全マウス尾静脈より親株・CD133陽性細胞を注入して、肝臓・骨髄に転移を作らせ、その浸潤・進展様式を比較検討する。なお転移巣を作らせる系はすでに確立している(Yoshida H, et al. Cancer Gene Ther 1998;5:67-73., 黒田浩明 他. 小児がん 1992;29:58-62.)。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は各種神経芽腫細胞株からのside populationの分離と、SPからのCD133陽性細胞のソーティングを目指したが、有効な回収率を得るための実験系の至適条件が細胞株毎に微妙に異なっており、その条件設定に時間を要した。科研費の用途は物品類、とくに細胞培養関係に多く出費しており、今後CD133陽性細胞のcharacterizationに用いる試薬類、PCR primer、免疫染色用抗体、免疫不全マウスなどはまだ本格的に購入していない。
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次年度使用額の使用計画 |
上述した如く、平成27年度は神経芽腫細胞株(MYCN 増殖株:IMR32, CHP134, LA-N-5、MYCN 非増幅株:SH-SY5Y)からsortingした各CD133陽性細胞のcharacterizaionを本格的に行う。具体的には、MYCN増幅の有無、増殖曲線、sphere形成能・造腫瘍能・転移形成能を細胞株間で検証し、本実験で要する出費は可及的に次年度使用額で充足する。
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