研究課題/領域番号 |
26462709
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永田 公二 九州大学, 大学病院, 助教 (20419568)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺発達 / 脱細胞化 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
先天性横隔膜ヘルニア(以下CDH)は、新生児外科疾患において治療方法の更なる改良・開発が急務な重症疾患である。特に高度な肺低形成を伴う重症CDHに対しては、出生後の横隔膜形成を主とする従来の治療方法では生命予後、生活予後の改善が望めない状態である。従って、欧米で試みられている胎児治療が母体への合併症に関する懸念から本邦では困難な状況となっている現在、治療法はcell therapyやgene induction therapyへと進展していくものと予想される。今回の我々の研究目的は、ニトロフェン誘導CDHモデルラット肺を脱細胞化し、間葉系幹細胞を注入した培養液で低形成肺の分化誘導が促進されるかの検討を行い、肺の成熟が確認された場合には、同種のニトロフェン誘導CDHモデルラット肺にこの分化誘導肺を移植するという新たな治療方法を開発することが目的である。 近年の再生医療に関する研究は目覚ましい進歩を遂げており、急性肺傷害や慢性閉塞性肺疾患に対して間葉系幹細胞を用いた新たな再生医療や脱細胞化を用いて組織の3D構造を維持した状態で間葉系幹細胞を注入して組織を成熟させ、成熟組織を移植する組織再生医療が注目されている。 一方、組織工学の分野では、ヒト脳死ドナーの気管を脱細胞化した後に間葉系幹細胞を投与し、分化誘導した後にレシピエントの気管に移植し、気道狭窄を改善したとの報告もある。このように、近年の研究では、間葉系幹細胞と組織工学を用いた再生医療の有用性が認められており、これらを応用することで低形成肺の肺成熟が得られるのではないかという仮説が生じた。 本研究では、低形成肺を有する横隔膜ヘルニアモデルラット肺の胎仔肺(甲)を摘出し、脱細胞化したのちに間葉系幹細胞を投与して分化誘導し、同種の横隔膜ヘルニアモデルラット低形成肺(乙)へ肺移植することで肺成熟が得られるとの仮説をたて、これを検証すべく研究を企図する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.CDHモデルラットの作成に関しては特に問題なく進んでいる。CDHモデルラットの作成としては、ニトロフェン投与CDHモデルラット妊娠9日目の母獣にニトロフェン100mgを胃内に投与してCDHモデル胎仔を作成する。妊娠20日目に胎仔を娩出し、開腹し、横隔膜の有無を確認し、横隔膜ヘルニア群、非横隔膜ヘルニア群の2群に分別する。各々胎仔肺を摘出し、組織培養を行う。 2.CDHモデルラットの脱細胞化と組織培養系確立に難渋している。ニトロフェン投与CDHモデルラット肺を胎生19日目に犠死せしめ、胎児肺を摘出し、間葉系幹細胞を投与した組織培養期間は2日間とする。この際の培養条件によっては、培養肺の中心に低酸素領域が出現し、中心細胞壊死が出現する。とくに大きな組織培養系にはよく問題となり、この点がなかなか改善できない。 3.組織培養後の肺とコントロール群との比較検討。1.培養液の上で2日間培養された分化誘導された群と間葉系幹細胞投与群との2群間で肺成熟や細胞増殖ならびにアポトーシスのマーカーを用いて比較検討を行う予定であったが、2において培養系の確立ができていないためになかなか次に進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.胎生19日目の出生直前のCDHモデルラットの左肺を摘出し、間葉系幹細胞による組織培養により分化誘導を行った培養肺を母獣体内で移植する。 2.その間、低形成肺を伴うCDHモデルラットに関しては人工呼吸管理を行う。 3.非移植群と培養肺移植群に関して出生後の肺の組織学変化を比較し、ⅰ)肺成熟の指標(・肺胞上皮Ⅰ型;肺胞上皮細胞のマーカー:Aquaporin 5, T1-αⅡ型肺胞上皮細胞:Surfactant protein-C, TTF-1・肺血管、血管平滑筋:a-SMA、ビメンチン,血管内皮細胞:VEGF、CD34)ⅱ)骨髄間葉系幹細胞の分化の指標(筋線維芽細胞および線維芽細胞 ・細胞外マトリックス(MMP,TIMP,コラーゲンなど))ⅲ)細胞増殖、アポトーシスのマーカー(・Ki-67、BrdU)の発現について比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に培養液の上で2日間培養された分化誘導された群と間葉系幹細胞投与群との2群間で肺成熟や細胞増殖ならびにアポトーシスのマーカーを用いて組織培養後の肺とコントロール群との比較検討を行う予定であったが、培養系の確立ができておらずなかなか次に進めていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
CDHモデルラットの脱細胞化と組織培養系確立に取り組む。
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