研究課題
胎仔期(発生初期)における神経堤由来の細胞の欠損やまたは分化、移動障害によって生じると考えられているヒルシュスプルング病は、欠損範囲の大きさによっては手術不能で死亡したり、術後に大きな障害が残ったりするケースがある。これまで、中枢神経系の細胞は一度損傷されると再生しないと考えられていたが、内在性神経幹細胞の存在が近年示され、様々な疾患で幹細胞などの細胞移植により喪失機能が回復した報告があることから、幹細胞治療の実現を目指して本プロジェクトを行っている。自己複製能と多分化能を持つ神経堤由来の幹細胞は、様々な臓器発生に重要な役割を担うが、その詳細は不明で、再生医療における重要性も十分な証拠がなかった。そこで我々はヒルシュスプルング病の手術不能例にも適用可能な、神経堤由来の幹細胞を用いた移植療法を実現するために腸管における神経堤由来幹細胞に関する様々な解析を行ってきた。現在までのところ、研究計画(1)として、正常腸管の神経堤由来細胞の未分化状態の解析を実施した。神経堤由来の細胞を緑色蛍光タンパク質でラベルしたトランスジェニックマウスにおいて、様々な神経堤や神経系の幹細胞マーカー、未分化神経マーカーと緑色蛍光タンパク質の共局在を免疫組織化学法にて確認した。また、研究計画(2)として、免疫電子顕微鏡観察を用いた正常腸管発生過程における神経堤由来細胞の解析を実施した。さらに、神経堤由来細胞を緑色蛍光蛋白質ラベルマウスから薬剤性のヒルシュスプルング病モデルを作成し、ヒトのヒルシュスプルング病の症状と極めて近い表現型を生後も継続的に示すことが確認出来た。これらの結果から、神経堤幹細胞の維持・増殖や分化の制御メカニズムの一端を明らかにするためのツールを確立ことができた。この基礎的な成果を基に来年度以降の研究計画を遂行したいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
予定通りのスケジュールで研究を実施できている。順調に伸展していると考えている理由は、申請時より6つの柱で実験および解析を進め、腸管神経ネットワークの発生・分化メカニズムに迫る計画を立てていた。そのうち計画通り、下記の研究計画の(1)および(2)のデータが順調に得られているため、計画通りに進展していると考えている。研究計画(1) 正常腸管の神経堤由来細胞の未分化状態の解析研究計画(2) 免疫電子顕微鏡観察を用いた正常腸管発生過程における神経堤由来細胞の解析
申請時に計画した予定の通り、平成27年度は研究計画(3)および(4)を実施するスケジュールを考えて、既に実験を開始している。研究計画(3) 新規ヒルシュスプルング病モデル動物の開発研究計画(4) ヒルシュスプルング病モデル動物における神経堤由来細胞の未分化状態の解析
予定通りのスケジュールで研究を実施したが、平成27年度計画に含まれる遺伝子改変マウス作成を実施するためにモデルマウスの生後の飼育に費用を見込んでいたが、胎生致死だったため、結果的に飼育費が節減できた。
上述の通り、遺伝子改変マウスの作成を行ったところ、本研究の新規モデルマウスが胎生致死だったことから、胎仔作成用のヘテロの母親マウスを大量に飼育しないとサンプルが得られないことが分かったので、次年度使用に繰り越した研究費はすべてマウス飼育費用に用いる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Stem Cells Translational Medicine
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Developmental Biology
巻: 400 ページ: 43-58
10.1016/j.ydbio.2015.01.014.
Microscopy
巻: 64 ページ: 57-67
10.1093/jmicro/dfu103.
Cytotechnology