研究課題/領域番号 |
26462715
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山高 篤行 順天堂大学, 医学部, 教授 (40200703)
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研究分担者 |
宮原 克 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究技師 (00420844)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二分脊椎症 / 鎖肛 / 神経堤細胞 / 腸管神経系 |
研究実績の概要 |
二分脊椎症患者の多くは排便排尿障害に悩まされており、患者の生活の質を向上させるために、詳細な発症メカニズムを解明し、障害に対する理解を深めることが重要であると考えられている。 平成26年度においては、二分脊椎症マウスモデルを作製し、排便障害に焦点を絞った解析を行った。 1)生体内で神経堤細胞を可視化するために、緑色蛍光タンパク質であるVenusを Sox10遺伝子に標識させたSox10-Venus マウスを用いて、全トランス型レチノイン酸(ATRA)により誘導した二分脊椎症モデルマウスを作製した。ATRAはマウスにおいて二分脊椎症と鎖肛を誘導することが知られている。また、鎖肛など肛門直腸奇形の患者には、潜在性二分脊椎症が多いと報告されており、二分脊椎症の排便障害の原因を理解するうえで有用である。 2)モデルマウス胎仔から摘出した腸管を実体蛍光顕微鏡で観察し、次に組織切片での免疫染色(PGP9.5、α-SMA)を行い、直腸遠位部における腸管壁内神経細胞の評価並びに肛門部における肛門括約筋を観察した。 未染色のモデルマウス腸管を用いた実体蛍光顕微鏡下での腸管神経系の観察では、直腸遠位部で正常な腸管神経系の欠如と増生した神経束と思われるVenus陽性神経線維束が確認された。免疫組織染色を用いた検討では、肛門括約筋は確認されず、腸管神経細胞の評価では神経節細胞は有意に減少していた。今回のATRAで誘導されたモデルマウスにおいて、二分脊椎症・鎖肛における腸管神経系と肛門括約筋の異常が観察できた。今後の二分脊椎症の排便障害との関係を解明するために、このモデルマウスは有用なツールとなりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二分脊椎症における排便機能障害については様々な原因が報告がされている。今回の検討では実際に神経堤細胞や末梢神経が直接蛍光タンパクで標識されたモデルマウスを作製し、形態学的観察を行ったことで実際に腸管神経系の異常を観察しえた。この腸管神経系の異常をヒルシュスプルング病のようなほかの排便機能障害を伴う疾患と腸管神経系にどのような形態学的な違いがあるかは検討する余地があるが、鎖肛を伴う二分脊椎症においての腸管神経系の異常を改めて示すことができたことは臨床的にも有用な結果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、Pax3 ノックアウトマウスを用いて、さらに特異的に二分脊椎症を発症するモデルマウスの作製と、排尿障害の原因について、今年度同様末梢神経が直接観察できるモデルマウスを作製し形態学的解析を行う予定である。
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