研究実績の概要 |
臨床データは順調に蓄積し、研究期間内のデータ解析は終了した。 SLIPは7例、MOの症例は10例、現存しているデータの解析は終了した。結果はこれまでの報告に類似し、MOは不当体重児(SGA児)に多く発症することが証明された。基礎研究に関しては、SLIP, MOの発症機序が、上腸間膜動脈と腎動脈の血管径の違いによる血流不均等や、インドメタシン投与による上腸間膜動脈と腎動脈の反応の差に伴う血流変化であると証明するには至らなかった。SLIP, MOは、極低出生体重児に多く、腸管の未熟性が指摘されている。特にMOは不当体重児(SGA児)に有意に多く発症することが知られている。我々はSLIPやMOは胎児の子宮内環境(血流障害)が発症要因と考えている。子宮内で発育していない非常に脆弱な腸管が、早産児として外界に晒されることでSLIP, MOを発症するという仮説を立てた。そこで腸管壁の脆弱性に着目し基礎研究をおこなった。まず低出生体重児における腸管壁の脆弱性を検討するにあたり、在胎10週令から20週令の正常胎児腸管と在胎22週以降に出生しSLIP, MOを発症した臨床症例の腸管をHE染色で比較検討した。その結果、疾患を発症した症例の腸管壁と在胎10週台の胎児腸管壁は同程度の発育を示していた。SLIP,MOの発症と胎児環境の関連を示すことができたものと考えている(未報告)。また当研究期間内では、腸管への血流不均等と腸管脆弱性が伴うことで病態の発症につながることが直接的に証明できなかったが、今後異なる手法にて腸管への血流不均等を発症させ(再灌流障害モデル等)、実際の臨床病理検体と比較検討し、さらに基礎データを蓄積していくことが病態解明につながると考えられた。
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