研究課題
胎児尿路閉塞は超音波検査で胎児診断できるが予後不良である。16 年以上に及ぶ羊を用いた胎児実験から、脳外科用V-Pシャント(脳室-腹腔シャント)を胎児膀胱に挿入することで膀胱機能が温存出来ることを証明したが、穿刺用キットの作成が困難であり、臨床実用にはいたっていない (Pressure–limited vesico-amniotic shunt tube for fetal obstructive uropathy. J. Pediat. Surgery 41, 2086-2089,2006 )。そこで、本研究は、尿路閉塞性疾患に対する胎児期の臨床応用可能なシャントチューブを確立するため、タマチ工業と富士システムが持つマイクロ圧調整バルブ技術を応用した胎児尿路閉塞症用シャントチューブを開発することを目的とした。図面では、金属製の圧調整バルブとシリコン製の富士システムのバルブ付きシャントチューブのプロトタイプを作成した。金属製チューブは組織との適応など不向きな部分が認められ、屈曲した部分に使用するにはチューブの硬さなどを考慮してより組織に対する障害の少ない富士システムのチューブを選択した。今回は、胎仔にはシリコン製の羊水-腹腔シャントチューブを挿入した。実験は母羊を全身麻酔下で、胎生80日に臍帯を付けたまま胎仔の膀胱を切開し、試作モデルの富士システム社製シャントチューブを膀胱内に挿入し、一方を羊水腔内に解放しシャントを確立した。5匹にnon valveのシリコンチューブ、3匹に1.0mm径の試作シャントチューブ(両側をパンタグラフ状に加工)を挿入、3匹に径1.5mmのシャントチューブを挿入した。妊娠経過中に自然脱落することはなかった。また、全サイズで内腔が閉塞することも無かった。今回は膀胱を切開してシャントチューブを挿入したが、次年度は穿刺実験を予定する。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は二つのプロトタイプを試作して、材質や圧調整機能からシリコン製のシャントチューブを試作した。この試作品を元に実際の羊の膀胱に数ヶ月間挿入したが穿刺キットではまだ挿入できていない。両端に抜去しないようにパンタグラフを作成したがこれは効果的であり、自然抜去は認めなかった。今年は穿刺キットを作成し、子宮の上から穿刺キットで胎児膀胱内に挿入することを試みる。また、先端に圧調整バルブを付けてからその圧調整機能が機能するかどうかを見ていく方針である。
今年の実験はニュージーランドで既に妊娠80日の胎仔が6月29日から1週間の予定で準備されており、その後3週間で膀胱機能などをチェックする予定である。最終的には9月の1日から満期で分娩させ、シャントチューブが機能していたかどうかを膀胱内圧検査などで調べる予定である。穿刺キットの開発を行っているので子宮壁から穿刺を試みたい。来年度は最終的に圧調整バルブ機能の圧を脳外科用の低圧機能と同様なものに作り上げることが最終目標となる。
オタゴ大学へ消耗品代金を送金する予定であったが、請求書が届いた時期が遅く、次年度にずれ込んでしまった。
近日中にオタゴ大学へ送金予定であり、その残金から旅費を支払う予定。
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小児外科
巻: 46 ページ: 630-634
Integrative Molecular Medicine
巻: 1 ページ: 76-80
巻: 1 ページ: 67-72
Journal of Pediatric Surgery
巻: 49 ページ: 1831-1834