研究課題/領域番号 |
26462720
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
北川 博昭 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80153097)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胎児手術 / 尿路閉塞 / 多嚢腎 / 膀胱機能 / 排尿障害 |
研究実績の概要 |
胎児期尿路閉塞は妊娠早期から診断できるが腎への圧負荷を減らす目的に膀胱-羊水腔シャントを施行しても出生後の腎機能が廃絶した症例や、自己排尿できない症例が多く患児のQOLは不良である。我々の羊を用いた胎児実験から、尿路閉塞患児の胎児治療は妊娠早期であればその方が腎機能の温存できる可能性は高く、MCDK(multi cystic dysplastic kidney)を防止できる時期を見つけた(Hiroaki Kitagawa; Vesico-amniotic shunt for complete urinary tract obstruction is partially effective, J Pediatr Surg 41;394-402,2006)。また、膀胱に定常圧がかかる脳外科用V-Pシャント(脳室-腹腔シャント)を用いることで、胎児期の膀胱容量が温存出来ることも証明した (Hideki Nagae, Hiroaki Kitagawa et al.Pressure-limited vesico-amniotic shunttube for fetal obstructive uropathy. J Pediatr Surg 41, 2086-2089,2006 )。そこで、子宮壁から穿刺可能でさらに定常圧のかかるシャントチューブがないため、出生後の排尿機能は廃絶している現状がある。そこで、富士システムと共同開発でシリコンチューブを用いて、定常圧を持つマイクロ圧調整バルブ機能を持つ、膀胱穿刺キット作成の実験を継続した。当初予定していたシリコン製バルブ付きシャントチューブのプロトタイプが皮膚を通過して穿刺で挿入可能かどうか、また、挿入後に脱落しないかどうかを調べることを本年度の研究目的とした。現状では穿刺セットがまだ作成できず、膀胱を手術的に開いて、本シャントチューブが作動し、膀胱機能が温存できるかを調べ、次いで穿刺キットを作成予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は胎仔にはシリコン製の羊水-腹腔シャントチューブを開腹法で挿入し膀胱壁の肥厚したモデルを作成し、その後バルブシャントチューブを挿入し膀胱壁の肥厚が改善するかどうかを調べた。実験は母羊を全身麻酔下で、胎生80日に臍帯を付けたまま胎仔の膀胱を切開し、試作モデルの富士システム社製シャントチューブを膀胱内に挿入し、一方を羊水腔内に解放しシャントを確立した。4匹にnon valveの1.5mmのシリコンチューブ、残りの2匹に1.0mm径の試作シャントチューブ(両側をパンタグラフ状に加工)を挿入した。妊娠経過中に自然脱落することはなかった。また、どちらのサイズでも内腔が閉塞することも無かった。すべてのモデルで膀胱壁の肥厚は認めた。 その3週間後にバルブシャントを挿入し、今まで肥厚した膀胱壁が適正圧のシャントチューブにより膀胱の収縮と拡張動作がおこなわれ、膀胱壁の肥厚が改善するかどうかを調べた。そこで、5匹の先端にバルブを挿入した新たなシャントチューブを帝王切開で胎仔を娩出させて、再度膀胱壁を開いて挿入した。その後妊娠を継続させ、満期の145日まで子宮内で胎児を管理し、満期に帝王切開で娩出させた。今回の5匹は脳外科で用いる低圧(15-54 mm H2O)シャントと同様な圧調整バルブを挿入したが全例ともバルブ圧が低かったため、膀胱壁の肥厚が改善されなかった。今回は膀胱を切開してシャントチューブを挿入したが、現在プロトタイプの穿刺キットがまだ作成できていない。新たなシャントチューブの膀胱壁に対する組織学的変化を比較検討したが膀胱瘻周囲にシリコンチューブの反応は無かった。しかし、バルブ圧の十分な確保ができていなかったためさらなる改良が必要であった。また、穿刺キットを挿入したときにチューブ先端の圧調整バルブの適正圧を維持できるキットの作成に苦慮している。
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今後の研究の推進方策 |
今年も既に新たなシャントチューブの羊に対する挿入に関してOtago大学の倫理委員会は通過し、7月4日に80日モデルとなるように契約農場で妊娠羊は5月5日に掛け合わせをおこない羊の胎仔の準備はできている。現在富士システムでシャントチューブの先端バルブの圧調整と穿刺キットのプロトタイプを調整し8月25日が初回治療から丁度3週間後にあたるため、この日にバルブシャントに変更して膀胱壁の変化が改善するかどうかを満期の9月23日に再度確認する。また、このプロトタイプの穿刺キットの改良をおこない、穿刺針とシャントチューブの段差が無くなるような工夫をしている。 現在最小チューブサイズが1mmであるがさらに細いチューブへの改良に今後必要かもしれない。チューブの肉厚を削り、穿刺針が挿入しやすくすることが重要課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Otago大学へ消耗品代金を送金する予定であったが、請求書が届くのが遅く、次年度払いとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
近日中にOtago大学へ送金予定であり、その残金より旅費を支払う予定。
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