研究課題/領域番号 |
26462725
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三川 信之 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40595196)
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研究分担者 |
窪田 吉孝 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (10375735)
佐藤 兼重 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50138442) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨再生 / 骨延長 / 脂肪幹細胞 |
研究実績の概要 |
良好な骨再生が行われるためには、豊富な血流の他に骨芽細胞やその他の骨再生に関連する細胞が潤沢に存在し、協調的に働くことが必須である。しかし、実臨床においては血流が乏しいうえに骨再生に関与する細胞の供給がほとんど得られないような場面にしばしば遭遇する。頭蓋縫合早期癒合症や上顎劣成長などに対して近年、骨延長術が行われるようになった。骨延長術は1日当たり1mm以下の緩徐な速度で骨切り部に延長刺激を加えることで仮骨形成を促す方法で同時に軟部組織の伸展も得られる優れた方法である。しかし、しばしばその効果を十分に発揮することを妨げる要素が存在する。その一つは、多くの患者で複数回の手術歴があることである。手術部位は瘢痕化し血流や骨再生の基となる細胞に乏しい。このような状況下で骨延長術の効果を得るためには、血管新生や骨再生を促す外来因子の導入が必要であると我々は考えた。近年、皮下脂肪組織から簡便に幹細胞(ADSC)が得られることが明らかになり、再生医療への応用が期待されている。細胞自身の骨分化を促す内因性の核内転写因子RUNX2発現はADSCが脂肪細胞より高かった。一方で骨誘導を促すBMP発現はADSCで脂肪細胞より低かった。すなわち、ADSC移植により骨誘導を促進する場合に周囲にある細胞の骨分化を促進するという点はBMPをなんらかの方法で補充することが必要と考えられ、その一つとして遺伝子導入が考えられた。組織再生に必須である血管内皮増殖因子VEGFの発現はADSCでは脂肪細胞より低く増強が必要な因子の一つと考えられた。すなわち、ADSCは皮下脂肪から低侵襲で大量に得られるため骨再生のための幹細胞として極めて有力な候補の一つであるが、最適の骨再生を促すためには細胞特性に応じた骨再生因子補充が望ましいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂肪組織由来幹細胞や対照となる天井培養由来増殖性脂肪細胞が分離できるようになったが骨再生因子に関する細胞レベルでの解析に時間を要した。そのため、多量の細胞を要する動物モデルを用いた細胞移植実験を行うにはさらに準備を要するため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析で明らかにした骨再生因子を用いた仮骨延長術における骨再生促進に標的を絞り、動物モデルにおいて脂肪組織由来幹細胞と骨再生因子補充により骨延長術における骨再生促進効果の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験倫理の観点からなるべく使用動物数を減らして必要充分な解析を行うために、脂肪組織由来幹細胞や対照となる天井培養由来脂肪細胞における骨再生に関わる細胞レベルでの解析を入念に行った。そのため、多量の細胞培養資材やや解析資材が必要となる動物モデルを用いた細胞移植実験を翌年に繰り上げることにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
仮骨延長術における細胞移植法を用いた骨再生因子補充による骨再生促進を動物モデルを用いて確立する。遺伝子導入細胞の移植、動物における仮骨延長術およびその効果の精密な解析に用いる予定である。
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