研究課題
1. 糖尿病マウスでは、創負荷のない定常状態にて、(1) 経皮水分蒸散量が対照群と比較して有意に上昇していた。(2) 色素浸透試験にて、角層に色素の浸透を認めた。通常施行されてきた、色素を塗布後に組織切片を作製して観察する、という方法では糖尿病群も対照群と比較して差がなかった。従ってin vivoで麻酔したマウスを直接観察する方法に切り替えたが、本学には本法に最適である2光子励起顕微鏡がなく、レーザー焦点顕微鏡を代替として利用したため、系の確立に時間がかかり、本実験が律速段階となった。これは、皮膚の最重要機能であるバリア機能が破綻していることを示唆した。2.上記結果を組織学的に解析するため、HE染色、免疫染色、また透過電子顕微鏡 (TEM)を用いた超微細構造解析を行った。その結果、基底細胞の菲薄化およびそれに伴うケラチン発現の異常と、脆弱な角層構造の増加を認め、HE染色およびTEMの解析と一致していた。基底細胞は、糖尿病マウスにおいて有意に減少していた。また、超微細構造解析において基底板の脆弱化が見られた。3.高血糖が、表皮細胞以外に表皮を構成するランゲルハンス細胞に与える影響を検証した。ランゲルハンス細胞は、糖尿病モデルマウスにおいて有意に減少しており、樹状突起の異常を認めた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、高血糖がランゲルハンス細胞に及ぼす組織学的変化を検証予定であった。しかし、その前に表皮の約95%を構成する表皮細胞の病態変化をさらに詳しく検証することが、表皮細胞とランゲルハンス細胞の相互作用を最終的に明らかにするために必須と考えて、先に解析を行った。さらに、高血糖に曝露されたランゲルハンス細胞の変化を、予備実験の段階とはいえ得る事ができた。
高血糖に曝露されたランゲルハンス細胞の病態変化の検証に力を入れる。ランゲルハンス細胞は、表皮の数%と数が少ない上に、糖尿病ではさらに顕著に数が減少しているため、解析が難しい。今年度施行した超微細構造解析においても、糖尿病群においてランゲルハンス細胞を観察することができなかった。今年度、再施行するべきか検討中である。
人件費は主としてマウスケージ交換に伴うアルバイトに使用予定であったが、今年度は糖尿病モデルマウスを用いる別のプロジェクトで民間助成金を得たので、そちらから支出することができた。また、物品費(消耗品)や旅費も民間助成金から出したのが、次年度使用額が生じた理由である。
今年度は、予定通り科研費を人件費や消耗品費に使用していく。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: - ページ: 印刷中
doi:10.1016/j.bbrc.2015.04.094
Plos One
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Congenital Anomalies
巻: 54(2) ページ: 69, 76
10.1111/cga12049