ケロイドは、いまだ難治であり発生機序の解明が困難な皮膚の線維増殖性疾患である。本研究では、ケロイドの発生機序を①遺伝因子、②全身的因子、③局所因子の3点において、横断的・総合的に解明してきた。特に、臨床的な経験から血管新生を抑制するとケロイドが治癒に向かうため、ケロイドの原因として血管関連因子を考え、解析を進めてきた。 ①遺伝因子として、一塩基多型(SNPs)の関与が示唆されている。われわれはSNPのrs8032158領域が、ケロイドの重症度と相関関係があることをGWAS解析において明らかにしたが、この領域がどのような意味を持っているかは現在も研究中である。 また②全身的因子としてはホルモンや高血圧、また血中の骨髄由来細胞の関与が示唆されている。ケロイド患者の血液より、血管内皮前駆細胞を採取し、その血管形成能を解析してきたが、健常人と比較して異常は認められなかった。しかし細胞に発現している遺伝子には若干の変化が認められた。また、われわれは臨床的に、若年発症のケロイド患者で血管内皮機能が低下していることを統計学的に示した。 一方、③局所的因子に関しては、力学的刺激の重要性、そしてメカノシグナル伝達経路の関与をわれわれは報告してきた。特に本研究で、ケロイドに特異的な硝子化した膠原線維が、血管周囲から発生することを明らかにし、報告した。血管から炎症に関与する因子が滲出することで線維芽細胞に影響を与え、硝子化した膠原線維が形成されることを明らかにした。
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