研究課題/領域番号 |
26462739
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松崎 恭一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20278013)
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研究分担者 |
難波 大輔 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10380255)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / 表皮細胞 / 糖尿病 / 難治性潰瘍 / 細胞培養 |
研究実績の概要 |
平成26年度と平成27年度に確立した手術の際に得た余剰皮膚を輸送し、その皮膚片より細胞を単離・培養する方法を用いることで、本年度、11例の重症下肢虚血患者の潰瘍部位より、表皮角化細胞を単離・培養することに成功した。また、同様の皮膚片より真皮線維芽細胞も単離・培養することにも成功した。単離された表皮角化細胞および真皮線維芽細胞を用いてコロニー形成実験を行った結果、これまで我々が行ってきた健常人のドナーから得られる表皮角化細胞や真皮線維芽細胞のコロニー形成実験と、ほぼ同じような結果が得られた。また1例では、潰瘍部位(足部)と正常部位(腹部)から、それぞれ表皮角化細胞と真皮線維芽細胞を単離・培養を行うことができたが、コロニー形成実験の結果、潰瘍部位と正常部位で、コロニーの形成率や大きさなどに顕著な差は見られなかった。以上の結果は、慢性潰瘍における創傷治癒の遅延の原因は、表皮角化幹細胞や真皮線維芽細胞の不可逆的な細胞特性の変化ではなく、周辺環境変化に対応した可逆的変化である可能性が示唆される。この場合は慢性潰瘍部位でも幹細胞などの再活性化が可能であり、新しい治療戦略の可能性が考えられる。一方で、今回の研究では、手術で得られた皮膚片全体より細胞を単離したが、創傷治癒の遅延した潰瘍の先端部位のみから細胞を単離した場合は、結果が大きく異なる可能性も考えられる。このような可能性も考慮しつつ、さらに詳細な研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は11例の臨床検体から、それぞれ表皮角化細胞および真皮線維芽細胞を単離・培養することに成功した。そのすべての細胞においてコロニー形成実験を行い、基本的な細胞特性の評価を行うことができた。これまでの4例を加え、全15例の実験結果から、潰瘍部位の皮膚組織においても、角化幹細胞や増殖性の高い真皮線維芽細胞が保持されていることを明らかにした意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
研究概要にも記載したように、今回の研究では、手術で得られた皮膚片全体より細胞を単離したが、創傷治癒の遅延した潰瘍の先端部位のみから細胞を単離した場合は、結果が大きく異なる可能性も考えられる。そこで、得られた皮膚片を部位ごとに分類したのち、同様の実験を行う必要がある。また得られた表皮角化細胞のクローナル・コンバージョンに関する実験例数が少ないことから、同様の実験を繰り返す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年9月にイタリアで開催された第5回世界創傷治癒学会連合会議(5th Congress of WUWHS)へ参加を予定していたが諸事情により参加を見送ったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度開催される関連学会への参加等により研究成果を発表する等に使用することを計画している。
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