研究課題/領域番号 |
26462741
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
小林 眞司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, その他 (90464536)
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研究分担者 |
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, その他 (50420691)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口唇口蓋裂 / 歯槽歯肉骨膜形成術 / 多血小板血漿 / 多血小板フィブリン / 骨形成 |
研究実績の概要 |
当該年度は、下記の3項目について研究を実施した。 1.多血小板血漿/フィブリン(PRP/PRF)作製時の血小板濃度の最適化および液性因子の組成・濃度測定に関して、PRPは、2回遠心法により作製することができたが、時間を要した。一方、PRFは、10-20分間の1回遠心法で作製できた。血小板とサイトカインの濃度を末梢血中およびPRP/PRF中で比較測定した結果、血小板濃度:末梢血33.8±8.8 PRF 49.5±72.3 、血小板由来成長因子(PDGF)濃度:末梢血7376.7±1874.8、 PRF 5663.7±6727.2、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)濃度:末梢血493.6±120.5、PRF 524.1±627.2、トランスフォーミング増殖因子(TGF-β1)濃度:末梢血22.5±11.7 、PRF 29.3±36.5と個人差が大きいものの、末梢血中よりもPRF中の濃度の方が概ね高値であった。従って、PRP/PRF移植の効果が期待された。 2. 移植用“PRP/PRF”形状の最適化に関して、PRPは凝固しない場合もあり市販のゼラチンスポンジに含有させて移植した。一方、PRFは血小板濃縮を維持しながら凝固させることができたため、顎裂部へ移植にはPRFの方が優れていることが示唆された。 3. In vivo における顎裂部骨膜の組織学的解析に関して、PRP/PRF中の液性因子およびin vitroでの骨膜細胞の挙動を解析し骨形成の機序を解明するために、ヒト乳幼児の骨膜細胞の培養は必須である。その前段階として骨膜細胞を含んだ骨膜の組織学的解析を行った。得られた7検体の骨膜組織は(当センター倫理委員会承認済)、粘膜下の厚さ約200-500μmの薄い組織であり骨膜細胞の密度は低かった。さらにヒト乳幼児の骨膜細胞の培養に向けて実体顕微鏡下で骨膜組織だけを分離することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3項目、すなわち1.多血小板血漿/フィブリン(PRP/PRF)作製時の血小板濃度の最適化および液性因子の組成・濃度測定2. 移植用“PRP/PRF”形状の最適化3. In vivo における顎裂部骨膜の組織学的解析は、すべて実施でき、ほぼ満足する結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
1.In vitroにおける骨芽細胞の挙動を調べるために、骨芽細胞の増殖および分化能を検討する。具体的には、in vitroにおいてヒト骨芽細胞を培養し、PDGF-bb,VEGF,TGF-β1, TGF-β2などの各種液性因子の濃度を変えて骨芽細胞の挙動を観察することにより至適な“PRP/PRF”濃度を推測する。 2.Computed Tomography(CT)による顎裂部の骨形成の定量的評価法の確立を目指す。すでに移植後5年経過した症例も散見され、CT評価がされているところである。これらの症例を参考にして、矯正歯科医と緊密に連携することにより、早期に試案を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は手術で余剰となったヒト検体が予定より少なく、液性因子解析、組織学的解析の費用が余剰となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、獲得できるヒト検体が本年度よりも多く、液性因子解析、組織学的解析、ヒト骨膜細胞の培養を行う予定である。
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