研究課題
我々は、これまで敗血症モデルラットを用いて、敗血症に対する塩酸ランジオロールの心保護効果および生存率の改善を報告してきた。その心肺腎肝についての効果についての論文報告を行うと共に、酸化ストレスに着目し、TEMPO-RNPと言う抗酸化ストレス剤をミセル化し病巣に運ぶドラッグ・デリバリー・システム(DDS)にも期待した。本研究において、その効果を検討する予定であったが、思うような効果は得られず、可能性を示すに留まった。基礎となるデータとしては、敗血症モデルをリポポリサッカライド(LPS)投与モデルで作成、対照群249.4±12.6 U.CARR LPS投与群295.9±12.8 U.CARRでp=0.023で有意な差を示した。(U. CARR=0.08mg/100mlH2O2)TEMPOにおいては、同大学長崎研究室との協力により十分な成果を得られたものを使用することが可能な状態であったが、薬剤合成のタイミング、投与タイミングなど実際の実験では難しい条件があり、モデルの投与までは至らなかった。TEMPO自体については、脳及び腎虚血再灌流障害において、TEMPO-RNPが両組織にニトロキシラジカルを運搬するDDSとしての機能を持ち、病巣で産生されるフリーラジカルを消去することにより組織保護効果を持つこと明らかにしている。また、TEMPO-RNPの血液中における生体適合性の検査では、異物であるナノ粒子により活性化された血球が互いに接着し、血液の凝固を起こしうる危険性を、TEMPO-RNPが活性酸素種を除去して炎症性サイトカインの産生を抑えることで抑え、高い血液適合性を持つことも明らかにされている。これらのことから、敗血症においては、酸化ストレスが病態悪化に関与していることが示され、TEMPO-RNPの合成タイミングの課題を克服することで十分な成果が期待できると考える。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Life Science
巻: 166 ページ: 27-33
10.1016/j.lfs.2016.10.010