研究課題/領域番号 |
26462746
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大嶋 清宏 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60361375)
|
研究分担者 |
萩原 周一 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20455992)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心肺蘇生 / 心肺停止 |
研究実績の概要 |
我々は現在までに、来院時のfibrin degradation products(FDP)およびD-ダイマー(DD)がInjury Severity Score (ISS)と良好に相関し、外傷重症度予測に有用であることを報告した。一方、心肺停止(CPA)患者における自己心拍再開(ROSC)の予測指標は、未だ確立されていない。我々は上記結果を踏まえ、来院時のFDPおよびDDがCPA患者におけるROSC予測因子として有用か否かを、我々が以前ROSC予測因子として有用と報告したanion gap(AG)およびアルブミン補正AG(ACAG)との比較を通じて検討した。2012年の1年間に当院救急外来に搬送されたCPA症例をretrospectiveに検討した。対象をROSC有り{ROSC(+)}群とROSC無し{ROSC(-)}群の2群に分けた。来院時のFDP、DD、AGおよびACAGを2群間で比較した。結果として53名のCPA症例が対象となった。AGおよびACAGの値は、ROSC(+)群がROSC(-)群に比較して有意に良好だった(AG28.7mmol/L versus 39.1mmol/L、ACAG;31.1mmol/L versus 40.9mmol/L、いずれもmedian)。FDPおよびDDの値に関して、ROSC(+)群がROSC(-)群に比較して有意に低値であった(FDP;32.1μg/mL versus 157.4μg/mL、DD;9.9μg/mL versus 37.4μg/mL、いずれもmedian). ROSCに対するAG、ACAG、FDPおよびDDのAUCはそれぞれ 0.664、0.667、0.714および0.707であった。以上よりFDPおよびDDはAGおよびACAGに比較してCPA症例におけるROSC予測因子として有用と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心肺停止症例における蘇生中の血中カテコラミン濃度と自己心拍再開さらには神経学的予後との関連を検索することで、心肺蘇生中のカテコラミン投与の有用性を検討することが本研究の大きな目的である。今回の検討では、上記に示した如く、心肺停止症例における自己心拍再開の有益な予測因子として、FDPおよびDDを挙げることがでした。心肺停止症例の自己心拍再開の評価に本結果は大変有益であり、初年度でこの結果が得られたことは、研究の進捗状況として概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当院へ搬送された心肺停止症例に関して、来院時における血中カテコラミン濃度(アドレナリン、ノルアドレナリンおよびドーパミン)と血中バゾプレシン濃度の測定を継続して行っている。バゾプレシンも測定しているのは、心肺蘇生ガイドライン2010の中で、初回あるいは2回目のアドレナリン投与に替えてバゾプレシン40単位の投与も認められているからである。この測定結果と自己心拍再開や神経学的予後、また昨年度で得られたFDPやDDとの相関を行い、研究を推進していく計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んだため、試薬等の消耗品の購入量が 当初の予定より少なく済んだため、残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額277,925円については、情報収集のための学会参加費や旅費に使用する予定である。
|