研究実績の概要 |
日本蘇生協議会による蘇生ガイドライン2015では、心肺停止(CPA)症例に投与する血管収縮薬として標準用量のアドレナリン投与が提案されているが、その効果に関しては未だ不確定であり、CPA症例におけるカテコラミン血中濃度に関しても不明である。今回、CPA症例における病院到着時の血中カテコラミン濃度からアドレナリン投与の意義に関して検証を行った。本研究は前向き観察研究であり、実施にあたり本院倫理委員会から承諾を得た。2014年7月~2016年9月までに当院救急外来に搬送されたCPA症例において、病院到着直後に採血しアドレナリン投与前の血中カテコラミン(アドレナリン:Ad、ノルアドレナリン:NAd、ドーパミン:DOA)およびバゾプレシン(ADH)の血中濃度を測定し、心疾患が原因のCPA(疑いも含む)症例における上記項目を検討した{結果はMedian (Q1, Q3)で表記}。対象は30例で、年齢79 (67, 89)歳、男女比15:15、病院到着時の心電図波形はVF 4例、PEA 6例、Asystole 20例だった。血中濃度はAd (≦0.10pg/ml): 0.97 (0.33, 4.41)pg/ml、NAd (0.10-0.50mg/ml): 0.88 (0.70, 2.48)mg/ml、DOA (≦0.03ng/ml): 0.07 (0.04, 0.19)ng/ml、ADH (≦4.2pg/ml): 28.7 (10.0, 64.6)pg/mlで、4項目とも正常範囲を超えていた。また、上記4項目と自己心拍再開(ROSC)との相関係数はAD:0.307、NAd:-0.193、DOA:-0.146、ADH:0.076だった。CPA症例の血中カテコラミン濃度は病院搬送時のカテコラミン投与前から正常範囲以上であり、ROSC獲得と関連しない可能性がある。
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