研究課題/領域番号 |
26462748
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
相星 淳一 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50256913)
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研究分担者 |
小林 哲幸 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (50178323)
柴田 政廣 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (60158954)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2 / 出血性ショック / 好中球 / 血管内皮細胞 / 多臓器障害 |
研究実績の概要 |
平成26年度は二つの実験を並行して行った。外傷性出血性ショック(25~30 mmHg、60分間)後の臓器障害の発症機序におけるホスホリパーゼA2(iPLA2、cPLA2、sPLA2)の役割を明らかにするため、それぞれのホスホリパーゼA2に対する特異的阻害剤、(S)-bromoenol lactone(iPLA2β)、(R)-bromoenol lactone(iPLA2γ)、pyrrophenone(cPLA2)、varespladib(sPLA2) の有効性について検討をおこなった。これまでの結果では、iPLA2γの特異的阻害剤である(R)-bromoenol lactoneは、肺、腸管、腎の血管透過性(Evans blue色素)の亢進や肺、腸管、腎、肝への炎症細胞の浸潤を有意に抑制するが、他の特異的阻害剤には抑制効果が認められないことを明らかにした。これらの所見から、iPLA2γは急性炎症における好中球の浸潤に関与することが示唆される。 二番目の実験では、生体顕微鏡を用いて、platelet activating factor(PAF)で刺激されたラット腸間膜微小循環における白血球の動態を観察した。腸間膜細静脈における白血球と血管内皮細胞の相互作用(rolling、adherence)に対するホスホリパーゼA2(iPLA2、cPLA2、sPLA2)の役割を解明するため、特異的阻害剤を用いて検証を行った。これまでの結果、PAF刺激や各阻害剤の投与は細静脈の血流やshear stressには影響を与えず、さらにPAF刺激は白血球のrollingやadherenceを有意に増加させることを確認した。今後、特異的阻害剤の効果について検証を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体顕微鏡を使用する研究(微小循環の白血球の動態におけるiPLA2、cPLA2、sPLA2 の役割)は初めておこなう実験であったことから、予想より多くの時間を予備的実験に費やすことになった。そのため、平成26年は2つの研究を同時に進行していたが、もう一つの研究(外傷性出血性ショック後の多臓器障害の発症機序におけるiPLA2、cPLA2、sPLA2 の役割)に若干の遅れが生じている。しかしながら、多くの有意義な実験結果を明らかにしていることから、全体としてはおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の推進方策について、①生体顕微鏡実験では各特異的阻害剤の影響を明らかにするとともに、同様の阻害剤を用いて、ヒト好中球のフィブリノーゲンに対する接着能および接着分子発現(CD11a/CD18、CD11b/CD18)についてin vitroで検証を行う、②やや遅れが生じているもう一つの研究(外傷性出血性ショック後の多臓器障害の発症機序におけるiPLA2、cPLA2、sPLA2 の役割)に関しては、血液、腸間膜リンパ液のリン脂質、遊離脂肪酸の質量分析による解析、炎症性メディエータ(TNF、IL-6、CINC-1)の測定、各臓器の組織病理学的検査、好中球の生物活性の測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、生体顕微鏡を使用した研究の予備的実験を中心に行っており、本実験の予算を計上することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
生体顕微鏡実験は、平成27年度も引き続き実施する予定であることから、100,000円を次年度に使用する予定である。
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