研究実績の概要 |
Deceleration Capacity (DC)は、瞬時心拍数の変化を減速成分として解析する新しい方法で、アーチファクトの影響が少なく、迷走神経活動を評価できる特徴を有する。実際に、急性心筋梗塞や救急外来患者の転帰予測に有用との報告がある。研究目的である整数心拍数の時間・周波数・複雑解析による重症度・転帰予測について、本年度は、DCの蘇生後脳症及び敗血症における重症度と転帰予測について検討、次年度に整数心拍数による解析と比較することとした。【方法】倫理委員会の承認のもと、ICU入室患者を対象とし、すでに保存或いは新規に記録した6~8時間分のRR間隔データを用いて、DC、周波数解析(Total,ULF,VLF LF, HFの各領域のパワー)、時間領域解析(Heart rate triangular index;HRT,SDNN,SDANN,RMSSDの指標)、複雑性解析(detrended fluctuation analysis:DFA指標)を算出した。蘇生後脳症では蘇生3ヶ月後のGOS1~3を転帰不良、GOS4~5を良好、敗血症では、ICU入室中の転帰(生存vs死亡)について、上記の各領域の指標を比較した。ROCによるAUCを算出、その転帰予測についても検討した。また、敗血症においては、上記の指標と重症度(APACHEII及び入室当日のSOFAスコア)の相関を検討した。【結果】蘇生後脳症31名、敗血症30名が対象となった。蘇生後脳症の転帰について、DC、HRT、SDNN、DFAにおいて有意差を認めたが、AUCはHRTとDFAのみが有意の0.76以上となった。一方、敗血症では転帰ではDCのみ、重症度ではAPACHEIIと周波数解析(Total,ULF,VLFの各パワー)に有意な相関を認めた。【結論】DCは蘇生後及び敗血症において生命予後の指標となるうると示唆された。本結果は救急医学会、集中治療医学会で発表した。
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