研究課題
2施設8消防隊8台の救急車にて搬送された114例の院外心肺停止に対して研究を行った。全症例の約30%に当たる33名に計測が可能であったCallawayらが同系列の機器を用いて病院前で計測した際は、胸骨圧迫をしても全くrSO2値の上昇を計測できなかったのに対し、今回の研究では、救急車内での計測開始時はrSO2値がほぼ最低値であったのに比して、CPRによりROSCなしの症例でもrSO2値の上昇を計測することができた。しかしながら有意差はないものの、prehospitalROSC症例はrSO2値が高い傾向にあり、CPRにおいてはROSCの達成が脳循環の改善に大きく寄与することが示唆された。しかしながら、全くrSO2値が蘇生に反応しない、mostly deadな症例もみとめられた。多くは現場でCPRを開始しているにもかかわらず、救急車内での計測開始時はrSO2値がほぼ最低値であったことは、ストレッチャーなどでの患者移動中に高い質の蘇生を維持することが困難となる、transport gapの存在を示唆すると考えられた。2チャンネルの計測値にはある程度の相関が認められたが、ばらつきもあった。このことは、計測がblindで行われたこともあり、計測の質が担保できなかったことを示唆すると思われる。上記の結果より、OHCA患者へのrSO2値計測は、予後予測(mostly deadな症例の認識)、Q-CPRの評価(CPRによるrSO2値の上昇)、特殊な状況(溺水・縊首・動脈瘤破裂)における蘇生法の検討に有用である可能性が示された。しかしながらblindによる計測では2チャンネルの計測値にばらつきがあり、より高感度で安定したセンサーの開発、Q-CPR評価のためのtime cycleを調整できるアルゴリズムなど、救急分野に特化した機器の開発が望まれると考えられた。
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