研究課題/領域番号 |
26462754
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西山 隆 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (60243771)
|
研究分担者 |
西村 与志郎 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (10566970)
植木 正明 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20213332)
冨田 修平 鳥取大学, 医学部, 教授 (00263898)
大坪 里織 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10568819)
山田 克己 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20714645)
安藤 維洋 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50719482)
岡田 直己 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70403293)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 低酸素症 / 脳神経障害 / 脳エリスロポイチン / 脳由来神経栄養因子 |
研究実績の概要 |
200年以上もの間、新生児の蘇生時には、中枢神経系の低酸素状態による影響をできるだけ少なくするため、100%酸素が使用されてきたが、2010年の国際蘇生連絡協議会のガイドラインでは、満期産時の低酸素症時には100%酸素より、空気での蘇生を推奨しているが、成人での低酸素症時の蘇生での酸素濃度は検討されていない。申請者は成人の低酸素症に対する蘇生時の100%酸素がその後、脳神経発達障害を引き起こすと推測し、100%酸素による脳神経障害発症機序を解明し,その対策・治療法へと展開するための基盤を確立することが目的である。具体的な研究方法として,まずは成人の低酸素症時の蘇生時の酸素濃度に違いにより、その後の脳神経障害を引き起こすかどうか検討し、脳神経障害発症機序を、脳エリスロポイチン、脳由来神経栄養因子(BDNF)、脳アポトーシスと脳病理組織学的観点から検討する。さらに治療法の展開として、活性酸素スカベンジャーまたはEPOの投与で、100%蘇生後の脳神経障害が改善できるかどうかを検討する。申請者は成人の低酸素症時の100%酸素による蘇生は、活性酸素増加、内因性EPO低下により、脳神経発達障害を引き起こし、その障害は活性酸素スカベンジャーまたはEPOの投与で、改善すると推測している。本研究結果により、成人の低酸素症時の蘇生での100%酸素投与が脳神経発達に及ぼす影響についての科学的根拠が得られ、その後、世界でこれらの基礎研究および臨床研究でも検証されれば、本研究結果が成人の低酸素症時の蘇生ガイドライン改定のための科学的根拠になり、成人の低酸素症時の蘇生時の安全性の向上に寄与するものと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現段階では低酸素症後の100%酸素蘇生に伴う脳神経障害の動物モデルの作成に実験を費やしている。8方向迷路学習機能の確認に行うには動物モデルの作成と同時に,熟練した実験遂行者による安定した結果が不可欠であり,十分な実験結果を得るにはまだ実験そのものが不足しているのが現況である。今後も,ある程度安定した脳神経障害のモデル作成を確立し,今年度中に脳神経障害発生機序の分析にとりかかれることを予定している。現段階では低酸素症後の100%酸素蘇生に伴う脳神経障害の動物モデルの作成に実験を費やしている。実際には,生後8-9週齢のC57BLマウスを用いて,低酸素ボックスで1時間低酸素曝露を行い、その後100%酸素、50%酸素、空気で30分間蘇生する群に分け作業を行う予定だがこの実験系は、新生児期のモデルにおいて既に共同研究者の植木正明により実証され報告済みであり、同様の器具とその手技を生かした成人モデル実験となる。8方向放射状迷路は透明プラスチック製8方向放射状迷路の各迷路の先端に餌を置き、これを取るようにトレーニングを行う。試行は1日1回で、4日間連続して行う。まだ入ったことのない初めてのアームに入り、餌を食べた場合を正選択、既に餌を取り終えたアームに再び入った場合を誤選択とする。最初の8選択における誤選択数を対照日に対して、比較検討する(性ホルモンが学習機能に影響を与えるので、雄マウスのみを使用)。脳神経障害動物モデルの作成と8方向迷路学習機能の実験には,熟練した実験遂行者による安定した結果が不可欠であり,まだ実験そのものが不足しているのが現況である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も,ある程度安定した脳神経障害のモデルの作成と8方向放射状迷路の学習実験を積み重ねていくことが課題である。そのため,今年度より他施設の専門家を共同研究者に加え,引き続き安定した脳神経障害の動物モデルの作成と同時に,8方向迷路学習機能の検討とは別に脳神経生涯発達の機序解明の観点から脳病理組織学的検討についての結果を出すことを検討している。これにより,少なくとも成人の低酸素症時の蘇生での100%酸素投与が脳神経発達に及ぼす影響についての科学的根拠が得られることが予想され,本研究の目標である蘇生時の安全性の向上に一役関わることが期待できると考えている。
|