研究課題
敗血症の死亡率は高く、新規治療薬の開発は現在の医学上の大きな課題である。敗血症の病態は、感染によって発症した全身性の炎症反応症候群とそれに基づく全身性の臓器障害であり、その発症要因として病原細菌に対する過剰あるいは抑制された免疫反応が重要である。これまで敗血症病態に関与する自然免疫細胞として、マクロファージ、好中球、樹状細胞などが検討されてきた。一方NK細胞については、敗血症時にその数と機能が低下すること、NK細胞機能が抑制されている敗血症患者では、そうでない患者に比べて生存率が低いことなどが報告されているが、その機序についての検討はほとんど行われていない。そこで今回、我々がこれまでNK細胞機能抑制分子として検討してきた可溶性ULBP2の敗血症への関与とその機序を検討した。本研究は、①敗血症時の可溶性ULBP2の関与の解明、②宿主細胞表面上のULBP2がsheddingされ、可溶性ULBP2となる機序の解明、③可溶性ULBP2の制御方法の開発を目的として行った。その結果、①臨床的敗血症である重症肺炎において、血清中可溶性ULBP2が上昇する患者が存在すること、②重症感染症時に宿主細胞に発現誘導される細胞表面ULBP2は、これまで報告されたメタロプロテアーゼの中で、ADAM10ではなく、ADAM17(TACE)によってsheddingされ、可溶性ULBP2となること、③免疫調節作用があるとされている14員環マクロライドであるクラリスロマイシンは、このADAM17(TACE)の活性を抑制することにより、可溶性ULBP2の産生を押さえることなどを初めて明らかにした。本研究成果は、クラリスロマイシンが可溶性ULBP2産量抑制剤新たな敗血症治療剤として有望である可能性、もしくは本作用機序による新しい敗血症治療薬開発への創薬シーズとなりうることを示している。
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Yonago Acta Med.
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J Med Invest.
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