アミオダロンは多チャンネル阻害剤である。リドカインが神経保護作用を持つようにアミオダロンも持つかもしれない。特に心肺蘇生時のVFに多用され安全に使用されている。ところで心肺蘇生時の全脳虚血後の再灌流は問題となり蘇生後脳症の一因となっている。この再灌流障害の予防にアミオダロンが効果を示せば、vf予防の投与自身が脳保護につながることになり、ルーチンでのアミオダロン投与が支持されることとなる。一方でアミオダロンには神経毒性作用があるとも報告され脳蘇生に対し漫然とした使用は悪影響をもたらすことが懸念される。このような背景のもとラットを用いた両側総頚動脈遮断+脱血低血圧モデルを使用し全脳虚血を用い実験を行った。虚血再還流後にアミオダロンを投与し虚血後投与のアミオダロンの効果を検討した。評価の方法としては虚血負荷5日後の組織学的評価と1-5日の高次機能評価を用いて行った。結果は組織学的にも行動学的にもアミオダロンは影響を及ぼさなかった。アミオダロンの脳への影響を見た研究は少なく、貴重な実験だったと思える。心肺蘇生時のアミオダロンの抗不整脈薬としての地位は広く認められており、このアミオダロンが心肺蘇生だけでなく脳蘇生にも効果があることが認められれば限定した使用でなく全例にその使用が推奨されるべきであると考えられたが、一方で脳毒性の問題もあった。今回の実験で現在の心停止後の蘇生に対するアミオダロンの使用に対する懸念も新たな期待もないことが示唆された。この結果は日本集中治療学会総会及び日本麻酔科学会総会で発表し、また科学雑誌にも掲載された。
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