細胞環境改善による炎症性肺疾患発症の予防と病態改善のための研究

2014 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26462767
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 藤島 清太郎 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (00173419)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 急性呼吸促迫症候群 / 炎症性肺疾患 / PAMPs / DAMPs

研究実績の概要

１．細胞培養系を用いた、異常細胞反応性獲得機序の解明と予防・治療法開発：　初年度は、呼吸器内科と共同で、ヒト血管内皮細胞を各種濃度の高濃度酸素曝露下で培養し、その影響を検討した。90%以上の酸素濃度下では、PAMPsである細菌内毒素（LPS）、および腫瘍壊死因子α（TNFα）の刺激により、炎症性サイトカインであるIL-8遺伝子の発現が増強されたが、これより低い酸素濃度下では誘導パターンにばらつきがあり、関連性を明らかにするため、様々な条件下で培養を行った。併せて、同培養細胞におけるDAMPs遺伝子、特にNOD1とNOD2の発現変動も検討した。
２．ヒトES細胞から肺組織細胞の効率的分化誘導法の探索：　初年度は、ヒトES細胞を空気曝露下で培養する方法（air-liquid interface法）の検証を行った。
３．マウス炎症性肺疾患モデルを用いた、侵襲後の異常細胞反応性の解析と予防・治療法開発： 初年度は、ブレオマイシンの経気道的投与による肺線維症モデルを用いて検討を行った。我々の以前の検討では、IL-17欠損マウスにおいて、急性肺損傷（ALI）が増悪しており、その機序を明らかにするための検討を行った。野生型およびIL-17欠損マウス（東京大学医科学研究所より供与）にブレオマイシンを経気管投与した後、7日後の肺組織を採取し、樹状細胞の動態とTh1サイトカインであるIL-12の発現を免疫染色にて検討を継続した。肺の樹状細胞マーカーとして、新たにCD11cを用い，またIL-12抗体も複数種類用いた。
４．SIRS、ARDS、炎症性肺疾患患者における生理活性物質・細胞外高分子物質、組織幹細胞の解析： 急性肺損傷（ALI）、急性呼吸促迫症候群（ARDS）患者肺局所の複数サイトカインをビーズアレイ法であるバイオプレックスを用いて検討し、IL-1β、IFN-γ、IL-17の高値を認めた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全体としては、ほぼ研究計画通りに遂行できた。

今後の研究の推進方策

今後も、当大学の呼吸器内科、救急医学、生理学教室との共同研究を継続し、研究を遂行する計画である。

次年度使用額が生じた理由

納品が遅れた消耗品があり、少額の残金が残った

次年度使用額の使用計画

次年度の研究費と併せ、研究遂行のために活用する予定である

研究成果

• [雑誌論文] A multicenter, prospective evaluation of quality of care and mortality in Japan based on the Surviving Sepsis Campaign guidelines (2014)
  • 著者名/発表者名: Fujishima S, Gando S, Saitoh D, Mayumi T, Kushimoto S, Shiraishi S, Ogura H, Takuma K, Kotani J, Ikeda H, Yamashita N, Suzuki K, Tsuruta R, Takeyama N, Araki T, Suzuki Y, Miki Y, Yamaguchi Y, Aikawa N, Japanese Association for Acute Medicine Sepsis Registry (JAAM SR) Study Group
  • 雑誌名: J Infect Chemother 巻: 20 ページ: 115-120
  • DOI: 10.1016/j.jiac.2013.09.003
  • 査読あり
• [雑誌論文] Plasma cytokine profiles related to smoking-sensitivity and phenotypes of chronic obstructive pulmonary disease (2014)
  • 著者名/発表者名: Nakamura M, Nakamura H, Minematsu N, Chubachi S, Miyazaki M, Yoshida S, Tsuduki K, Shirahata T, Mashimo S, Takahashi S, Nakajima T, Tateno H, Fujishima S, Betsuyaku T
  • 雑誌名: Biomarkers 巻: 19 ページ: 368-77
  • DOI: 10.3109/1354750X.2014.915342
  • 査読あり
• [雑誌論文] Pathophysiology and biomarkers of acute respiratory distress syndrome (2014)
  • 著者名/発表者名: Fujishima S
  • 雑誌名: J Intensive Care 巻: 2 ページ: 32
  • DOI: 10.1186/2052-0492-2-32
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] ALI/ARDSの診断と治療：バイオマーカー (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 雑誌名: 呼吸器内科 巻: 25 ページ: 204-11
• [雑誌論文] 急性呼吸促迫症候群：画像とバイオマーカーからの病態評価 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 雑誌名: 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 巻: 24 ページ: 220-7
• [学会発表] ALI/ARDS患者肺局所サイトカインの網羅的解析による病態評価の試み (2015)
  • 著者名/発表者名: 中野泰、藤島清太郎、宮庄拓、田坂定智、橋本悟、長谷川直樹、別役智子
  • 学会等名: 第55回日本呼吸器学会学術講演会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-04-17 – 2015-04-17
  • 招待講演
• [学会発表] 急性呼吸促迫症候群：ガイドライン後の知見と最近の話題 (2015)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 学会等名: 第12回日本集中治療医学会主催リフレッシャーセミナー
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-02-08 – 2015-02-08
  • 招待講演
• [学会発表] 敗血症バンドル遵守率と死亡率による診療の質の評価 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 学会等名: 第27回日本外科感染症学会総会学術集会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2014-12-05 – 2014-12-05
  • 招待講演
• [学会発表] 救急診療の場で遭遇する感染症の特徴 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 学会等名: 第42回日本救急医学会総会・学術集会／第193回ICD講習会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2014-10-30 – 2014-10-30
  • 招待講演
• [学会発表] ARDS：ガイドライン後の知見と最近のトピックス (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 学会等名: 第42回日本救急医学会総会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2014-10-29 – 2014-10-29
  • 招待講演
• [図書] 呼吸器疾患診療最新ガイドライン： 肺水腫 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤島清太郎
  • 総ページ数: 395
  • 出版者: 最新医学社