研究課題/領域番号 |
26462768
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 武志 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327600)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 敗血症 / β遮断薬 / Tリンパ球 / 細胞死 / 臓器障害 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず生体外実験として、マウスの脾臓から抽出したTリンパ球を用いて、カテコラミン(エピネフリン、ノルエピネフリン)がTリンパ球のアポトーシスに与える影響を検討した。全身麻酔下にマウスから脾臓を取り出し、脾臓を膜で濾して試薬により赤血球を溶血させたのち、nylon wool columnを用いてTリンパ球を抽出した。Tリンパ球を培養液に移し、24時間カテコラミンによる刺激を様々な濃度で(0, 0.1, 1.0, 10, 100 uM)行った。フローサイトメトリーによる評価にて、カテコラミン刺激は濃度依存性にTリンパ球のアポトーシスを誘導した。 生体内実験では、盲腸穿孔術による敗血症マウスモデルを用いた。まず敗血症の脾臓内Tリンパ球アポトーシスに対する影響を検討するために、盲腸を結紮する位置を変えることによって3群の重症度がことなる敗血症モデルを作成した。24時間後に生体外実験と同じ方法にて脾臓からTリンパ球を抽出し、正常Tリンパ球の数とアポトーシスの割合を調べたところ、アポトーシスの割合は変化がなかったが、正常Tリンパ球の数は重症度に比例して減少した。 次に、盲腸穿孔術を行ったマウスを生理食塩水の持続皮下注を行うcontrol群とβ遮断薬であるエスモロールの持続皮下注を行うesmolol群に分け、同じように24時間後に脾臓内Tリンパ球の数とアポトーシスの割合を調べたところ、エスモロール投与はアポトーシスの割合に対しては効果がなかったものの、脾臓内正常Tリンパ球数の減少を抑えることができた。 これらの結果より、敗血症におけるカテコラミン刺激はTリンパ球の細胞死に関与し、β遮断薬の投与は脾臓内正常Tリンパ球数を維持する効果があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、生体外実験においてカテコラミンがTリンパ球のアポトーシスに与える影響についての結果を得ることができ、生体内実験においては、敗血症の重症度による正常脾臓内Tリンパ球の数に与える影響とそれに対するβ遮断薬の効果についての実験結果が得られたため、交付申請書に記載した研究の目的を概ね満たしているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究では、カテコラミンが敗血症における脾臓内Tリンパ球の細胞死に関与し、β遮断薬がその数を維持する効果があることが示された。今後は、採血して冷凍保存してある血漿中の炎症性サイトカイン濃度の測定やcontrol群とesmolol群で生存率に違いがあるかについての検討を行っていく。また、esmololの投与による、Tリンパ球の分画の変化についても検討していく。さらに脾臓内Tリンパ球のみならず、凝固系に与える影響や他の臓器に与える影響についても今後は検討を重ねる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、備品として申請して購入したCO2インキュベーターを当初の見積額より安価で購入できたことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は高額の備品を購入する予定はないが、実験で使用する消耗品を中心に使用し、学会参加の旅費にも使用する予定である。
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